妖怪に興味を持つ人は、水木しげるの著作物をその入り口とする人が多いようである。私も『ゲゲゲの鬼太郎』世代ではあるが、子どもにとってのアニメや漫画がそうであるように、それは一過性のものでとっくの昔に卒業していた。ところが、妖怪ウォッチブーム下の2014年、中学生に導かれて何十年ぶりかに妖怪界の扉を開けた。すると、予期していなかったことに、自分の両脚が主体的に踏み出していった。
この機会に、柳田國雄の『妖怪談義』を読んでからというもの、妖怪伝承に民俗学という新たな視点が加わった。さらに、鬼や天狗、山姥や土蜘蛛など国ツ神系の妖怪は、山人のくらしや山岳宗教と密接な関係にあることを知った。
戦前の著作物である澤田四郎・作『大和昔譚』や高田十郎・編纂『大和の傳説』に触れると、奈良県も例外にもれず妖怪の宝庫である。鬼太郎に出てくる砂かけ婆や妖怪ウォッチの土蜘蛛は今や全国区であるが、元をたどれば奈良県出身の妖怪である。
ところが、こうした妖怪たちの多くが、世の中が明るくなるにつれ絶滅危惧種となっている。その保護には、子どもたちだけでなく大人にも語り継いでいくということが肝心である。というわけで、ここから先は、大人向けの妖怪談義となる。 |