昔、蒲生家第15代祐玄(すけくろ)が便所に入っていると、落ち穴の下からニュウっと氷のような冷たい手でお尻をなでるものがあった。祐玄はその手をつかんで、持っていた刀でその手を切り落とし、家に持って帰った。しばらくすると、17〜18歳の美しい娘が片手を袖にかくしながら訪ねてきて、「私の手なので返して下さい」と謝った。祐玄は何も言わずに返してあげたが、その後娘がまたお礼にやってくると、手はもとのようにくっついていた。祐玄は、「どうしてそんなに見事に手をつなげたのか」と聞くと、「私は切り傷の特効薬を知っています。お礼にその妙薬の作り方を伝授しましょう」と、詳しく教えて立ち去った。娘と思っていたのは、川太郎(ガタロ)が化けていたのだった。秘薬は「蒲生錦草祐玄湯」という名で伝わり、今日に至っている。 |