○紀州船津村(現・三重県北牟婁郡紀北町)の六兵衛という猟師が大台ヶ原大蛇ーまでスクリの木をとりに入り、夜たき火をしていたところ、40歳ぐらいの女が立っていた。「ご飯をくれ」と言って櫃にのった麦飯をみるみるうちに食べてしまい、さらに「酒をくれ」といい六兵衛の五升樽を飲み始めた。そこへ突然同じ年格好の女が来て、二人の女が無言でにらみ合ったが、あとから来た女が無言ですっと消えた。するとたちまち天地振動し、酒の女は消えうせ、巨身白髪白髭の老人と後から来た女が立っていた。「私は大台ヶ原山の神で、前の女は鬼だった。鬼の力が強かったので、この弥山大神の助けを仰いで、お前を救い出したのだ。」と告げ、二神とも姿を消したという。(※1,2)
○尾鷲の魚屋のいそべさんととめじいという人が、大台を越える峠で山姥に出会った。枯れ木のようで髪の毛が長く、目だけがギョロギョロ光っていたそうだ。茶色い体でシャレ木のような姿やったらしい。裸やけど男か女かはっきりわからなかったらしい。こわかったんで「どうぞこれを召し上がって下さい」と魚をさし上げてこらえてもらった。(※3) |