● 【葛城二十八宿】第二十四経塚「妙経妙音菩薩品」(みょうおんぼさつほん)

第二十四経塚(平石峠)

【妙経妙音菩薩品第二十四】  ※要約
  妙音菩薩が、別の国土から釈尊に会いに娑婆世界にやってくるという話。その出発前、仏国土の如来が妙音菩薩に「釈尊やその他の菩薩たちは背が低いが、劣った者とみてはいけない」と忠告する。
妙音菩薩が、六道の衆生を救うために34の姿を現すことが説かれている。

【日本遺産】 葛城修験(構成文化財)
 平石峠 妙音菩薩品(第二十四経塚)

文献

引用・抜粋文

『葛城峯中記』
(室町時代初期)
鎮永/千勝院

八十一 牛頭天王 牛頭水 薬王菩薩品第廿三
八十二 大藤多輪 虵池原
八十三 金剛沙寺
八十四 大泉寺
八十五 如意寺
八十六 藤尾宿
八十七 小鷲宿
八十八 神旡多輪 妙音薩品第廿四・・・
八十九 着給跡石有。・・・
九十 鉾立ヨリ東ノ谷へ下ル伏越里也。號伊勢宿。・・・鉾立左西へ下ルハ廣川寺江下レハ北ニ見初塚有、神下江往着也。高貴寺ノ石藏院本堂ハ
九十一 五大尊。左卅番神。
九十二 護法笈石 辨財天 普門品第廿五・・・

『葛嶺雑記』
(江戸時代後期)
智航/
犬鳴山七宝龍寺

平石峠経塚 
 河州石川郡平石村の山上古記に随ひて和州より河内にいたらんと峠を十間斗下り往来の左手に有
○妙 妙音菩薩品第二十四之地
 千早ふる平石の山の廣たわに経塚の名は高くもあるかな

『河内名所図会』
(1801年/享和元年)
石橋

此石橋の形を見れば、巨巌にして面に橋板の段ある事四ツ、両端、稍隆うして欄檻に似たり。幅三尺余、長八尺許。西南の方、些し欠たり。
形勢、将に南峰に逮んと欲す。実に、人力の到る所にあらす。伝云、むかし、役優婆塞、葛城の峰より金御嶽へ通ひ給はんとて、石橋をかけなんとす。これを諸々の神に命じ給ふ。葛城一言主神、容貌いと醜ければ、昼の役をはゞかりて、夜をまち給ひしより、橋をわたし得給はず、行者いかりて、一言主神を呪縛して、深谷に押籠置たまへり云云。

【以下の文献より引用・抜粋】
●『葛城峯中記』は『葛城の峰と修験の道』中野榮治・著 ●『葛嶺雑記』は『葛城回峯録』犬鳴山七宝滝寺に収録

 『葛城峯中記』によると、第二十三経塚から平石峠の第二十四経塚に至る間に、いくつかの寺院を記している。その中の「八十五 如意寺」は葛城市太田にある如意山蓮生院と縁があるようにも思える。さらに、「九十 鉾立ヨリ東ノ谷へ下ル伏越里也。號伊勢宿。・・・鉾立左西へ下ルハ廣川寺江下レハ北ニ見初塚有、神下江往着也。高貴寺ノ石藏院本堂ハ」と記されている。「鉾立」は、岩橋峠付近にある岩橋、人面石、鍋釜石、胎内くぐり岩などと並び称される巨岩・奇岩の一つと思われ、岩橋峠を西へ下れば弘川寺があり、東に下れば伏越の里と記している。伏越は、岩橋山東麓の山村で、現在、数棟の家屋が残っている。また、集落の入口には荒れつつある神社の祠が見られ、大正8年建立の「春日神社遙拝所」と刻まれた石碑が建てられている。
 『葛城峯中記』の道程順を、現在の登山道等に重ねると、効率的なルートとは言えない。平石峠にある第二十四経塚に至ると、第二十五経塚のある高貴寺までは、徒歩30分ほどの距離で、他の経塚間と比較するとあまりにも近いのが不思議である。長い歴史の中、経塚が変遷していったことも推察されるが、少なくとも江戸時代末期には、現在の2ヵ所の経塚に落ち着いたようだ。
 平石峠は、ダイヤモンドトレールと府道704号線(竹内河南線)の交差点だが、府道704号線といえども、車両が通行するほどの幅員はなく登山道とさほど変わりない。第二十四経塚には、自然石の祠に役行者座像が安置されており、さらに右手に不動明王の石像がある。これほどのラインナップは珍しく、私のお気に入りの空間である。

 
岩橋山山頂   奈良県側から見た岩橋山
 
棚機神社   平石峠
 
伏越集落と岩橋峠方面との分岐   伏越の「春日神社遙拝所」

 岩橋山は、奈良県葛城市と大阪府河南町の県境に位置し、どちらからもよく見える。奈良県側からのルートは、道の駅かつらぎからほど近い棚機神社から岩橋峠をめざす登山道があるが、利用者も少なく随分荒れている。一方、河南町側からは、平石に登山口がありよく整備されている。江戸時代に刊行された『河内名所図会』にも、今も残る「石橋」の説明があり観光名所の一つだったようだ。役行者が葛城の峰から大峰山まで石橋を架けろと葛城一言主神に命じたが、顔が醜いのをはばかって夜にしか工事をしなかったのでなかなか進まず、役行者が怒って一言主を呪縛して深い谷に押し込めたという。いつ頃造られたものか分からないが、岩橋山山頂からほど近いところに花崗岩製の石橋がおかれている。池の太鼓橋のような大きさだが、橋板が4枚彫られているだけで、これでは大峰山に届くどころか、後世の一言主は随分言いつけをさぼったみたいだ。他にも、人面石、鍋釜石、胎内くぐり岩などと並び称される巨岩・奇岩が周辺に散在しており、行場だったのだろうか。こうした造形物の位置を示した登山マップが、河南町で作成されWeb上から入手でき、この町の観光資源の一つとして位置づけている。

 
岩橋   胎内くぐり

 

『河内名所図会』より岩橋   『河内名所図会』より胎内くぐり
 
鍋釜石   人面石
 
鉾立石   もみじの滝