獣糞に集まり、糞を食べ、雌は糞で育児球を作ってそこに産卵する。孵化した幼虫は、糞でできた育児球を食べて育つ。こうした糞虫の生活スタイルとは裏腹に、その背は美しく黄金色に輝いている。その名も「雪隠黄金(センチコガネ)」とは、うまく付けたものだ。
私がこうした糞虫の存在を知ったのは、小学校の国語の教科書にでてきた『ファーブル昆虫記』を読んでから。アンリ・ファーブルが南フランスで見つけたスカラベ・サクレ(その後、ヒジリタマオシコガネと改められる)という甲虫には、タマオシコガネやフンコロガシの和名が充てられた。家の周辺をずいぶん探したが、フンコロガシが見つかるはずもなく、アリの観察に切り替えてファーブルを追体験をした思い出がある。
大台ヶ原では「オオセンチコガネ」という種がよく見かけられる。通常、オオセンチコガネの背面は赤っぽいが、大台ヶ原を含む紀伊山地や奈良県内の個体群はとりわけ青みがかっていて、「ルリセンチコガネ」という俗称がついている。一方、琵琶湖東岸から鈴鹿山脈にかけての個体群は鮮やかな緑色をしており、「ミドリセンチコガネ」と呼ばれている。
産卵期は秋で、糞の下に穴を掘って糞を引きずり込み、育児球を作る。獣糞のほか動物の死がいなどにも集まり、自然界においては土に戻す分解者として大切な役割を担っている。奈良県内では、ニホンジカの多い奈良公園や春日山原生林も糞虫観察の最適地である。デジカメをもって、糞虫コレクションを始めてみませんか。 |