【森林鉄道網/元木谷起動所〜ナゴヤ谷インクライン】
大台山林事業中止からほぼ100年たった今なお、トロッコ道の痕跡は尾鷲道や東大台・西大台各地で確認できる。
現在、そうしたトロッコ道跡の一部分は登山道として利用されており、東大台では、シオカラ谷吊り橋を渡り階段を北へ登り切ったところから続く東ノ滝東側の登山道がそうである。途中、固い岩盤も掘削され切り通しとして残っている(※画像1)。この道を北進すると、やがて案内板に行き当たり、ここから駐車場まで急階段の上りとなる(※画像2)。しかし、この案内板の裏手をよく見ると、幅1〜2mの平坦な道が林内を奥に向かって貫いている(※画像3)。トロッコ道は、ここから西大台に入りナゴヤ谷インクラインに通じているのだ。さらに、ナゴヤ谷インクラインから北は、西大台の周回登山道と重なり、標高1400mの等高線に沿ってトロッコ道が走っていた。
そのトロッコ道跡は、標高1400mをキープしながら、登山道を大きく北にはずれ林内を貫通していく。この延長線は、七ツ池と開拓跡間の標高1410m付近で登山道と十字交差する(※画像4)。
シオカラ谷に話を戻すと、吊り橋を北へ渡り急階段を登り切ったところで、右手をよく見ると、獣道のようなルートが延びている。環境省設置の標識Y-16が建てられて
おり、ここから奥は歩道でなく、ロープが張られ進入禁止となっている。(※画像5)2015年、大台ヶ原パークボランティアの会で、許可を得てこの先を調査した
ところ、シオカラ谷に元木谷が合流する河川敷には、かつて、インクラインの起点となる元木谷起動所や挽材工場
と思われる大きな裸地が広がっていた。また、そうした建屋の基礎部分や護岸のための石積みもみられる(※画像6)。
トロッコのレールや車軸付き車輪も散在し(※画像7)、さらに、鉄製の鍋やビン・茶碗の破片など当時の生活ゴミも放置されたままとなっていた(※画像8)。大台ヶ原の山中において、伐採の歴史が残る
爪痕が確かに残っていたのだ。 |