Nature Guide くりんとの自然観察ガイド
峯集落(2024.3.9.)
バラ科サクラ属の樹木は、日本に9種が自生しているが、ソメイヨシノに代表されるように数多くの栽培品種もある。熊野地方(熊野川流域)では、ヤマザクラやカスミザクラも自生するものの、これらより約1ヶ月ほど早く開花する桜が知られていたが、ヤマザクラの範疇でとらえられていた。そして、2016〜2017年に、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所は、和歌山県林業試験場と共同で、紀伊半島南部(奈良・三重・和歌山県)に新種の野生のサクラが分布していることを 調査・確認し、日本植物分類学会が発行するActa Phytotaxonomica et Geobotanica誌(69巻2号2018年6月30日発行)に論文が受理された。1915年にオオシマザクラの種名が発表されて以来、サクラ属ではおよそ100年ぶりの新種の発見で、「クマノザクラ」と命名されている。 クマノザクラの特徴 ○ 開花期は、ヤマザクラやカスミザクラより約1ヶ月早い。 ○ 熊野川流域を中心としたおよそ南北90km、東西60kmの範囲に多数の野生個体がある。 ○ 花序柄が短く無毛、葉身がヤマザクラやカスミザクラよりも小さく卵形。 <参考文献>森林総合研究所・和歌山県林業試験場PRESS RELEASE(2018/3/13)
【古座川町のクマノザクラ】 古座川町役場地域振興課・観光協会は、Web上に「クマノザクラMAP」を公開しており、クマノザクラを町の観光資源の一つに活用しようとしている。ざっくり言えば、3月中旬、古座川や熊野川流域に自生し開花している桜は大概クマノザクラの可能性が高いが、公的機関のお墨付きをもらったクマノザクラを観察しようと思えば、この地図がとても重宝する。 ○ 高池の虫喰岩から地蔵峠に向かって車道を上っていくと、「池野山のタイプ木」という桜がある。クマノザクラの特徴をよく持ち合わせており、しかも、道路沿いで観察しやすいところに自生しているので必見である。 ○ 虫喰岩まで戻って池野山川に沿う林道ムジ屋敷線を北上すると、向かって右手の山中に自生する桜がクマノザクラであるという説明だが、林道から遠く観察しにくい。 ○ 滝の拝に向かう車道を北上し中崎トンネル北出口を右折して川に沿った旧道を走ると、大きなクマノザクラが川に四肢を伸ばしている。眼下の河原に降りればいい写真が撮れそうだが。 ○ 一枚岩に向かって国道371号線を北上し、一雨橋を渡ったところで左折し峯集落をめざす。果たしてその先に集落があるのか不安になるが、やがて森が開けたところでクマノザクラの大木が迎えてくれる。私一押しのクマノザクラである。 【紀伊半島のクマノザクラ】 先の古座川町などは、クマノザクラを観光の目玉として積極的にPRしているが、近年では、クマノザクラと思われる個体があちこちで報告されている。日本クマノザクラの会Websiteによると、和歌山県の北限は護摩壇山、三重県は尾鷲市南浦、そして、奈良県の大迫ダム周辺のものは紀伊半島の最北限として紹介されている。開花期は、自生地によって異なる。
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