Nature Guide
                         くりんとの自然観察ガイド

           
   
 大和に咲くスミレ
 
↑タチツボスミレ(大塔/2005.4.6)   ↑ケイリュウタチツボスミレ(大塔町赤谷/2009.4.22.)
 
↑ニョイスミレ(葛城山/2009.5.20.)   ↑スミレ(葛城山/2009.4.29.)
 
↑アリアケスミレ(金剛山麓/2009.4.10.)   ↑ヒメスミレ(五條市野原/2009.3.31.)
 
↑シハイスミレ(葛城山/2009.4.29.)   ↑フイリシハイスミレ(金剛山/2013.4.20.)
 
↑エイザンスミレ(金剛山/2013.4.20.)   ↑ヒメミヤマスミレ( 大台ケ原/2012.6.3.)

 どうやら、スミレという山野草は、たいへん種類が多いようだ。『日本のスミレ』(いがりまさし著)という図鑑を手に入れたが、日本に自生するスミレとして100種以上紹介されている。私の周辺では、タチツボスミレが圧倒的に多く、「スミレ」というスミレはずいぶん探さなくてはならなくなった。スミレと一口に言っても、種類によって開花期も異なりのだが、概ね3〜5月がシーズンだ。この機を逃すと、また一年待たなければならない。 ある年の春、少し気合を入れてスミレを探してみようと、思いつくところを駆けまわると5〜6種類のスミレに遭遇することができた。
 自然豊かなところには、さぞかしスミレも多いことだろうと思いしや、実は鬱蒼とした照葉樹の森にはほとんど見られない。また、ブナやミズナラの残る原生林にもさほど見られない。地面を這うように自生する背の低いスミレが、太陽の光をたくさん得るには、雑木林の林縁や森林の伐採された跡地、あるいはギャップ、崖地などを選ばなくてはならない。
しかし、このような環境はそうそうあるものではなく、有史以来、スミレが好むようになった環境は、人の手によって定期的に草刈りが行われる田畑の畦や道路の法面などである。スミレより背の高くなる草本や樹木を人間が取り除いてくれるのだから、スミレにしてみれば、人の生活の近いところがむしろ種の繁栄に好都合だろう。かといって、アスファルトで固められた都会や住宅地の真ん中では、根を下ろすにも厳しい環境だ。つまり、田園風景が広がり人の手の入った里山が残る里こそ、スミレが適応した楽園と言えよう。
 自然をたっぷり残しつつも人の生活の営みが見られる場所。つまり、自然と人間が仲良く暮らしているところ。そんなところがスミレの住みかなのだ。

種名 グループ 地上茎 葉の形 特徴 近似種
タチツボスミレ タチツボスミレ類 心形    
ケイリュウ
タチツボスミレ
心形 花弁が細い  
ニョイスミレ ニョイスミレ類 心形 花期が最も遅いものの1つ ミヤマツボスミレは高山型で、白山から八甲田山まで分布
スミレ ミヤマスミレ類 へら形 葉柄に翼があり、斜め上に展開する  
アリアケスミレ へら形 葉身が葉柄より長く、水平に広げている。日当たりのよい湿り気のある所 シロスミレは葉柄に比べて葉身が短く、標高1000m以上に分布
ヒメスミレ 披針形 鋸歯が粗く葉柄に翼がない。裏面は紫色。日当たりのよい乾燥ぎみな所 スミレよりひとまわり小さく繊細な感じ。葉柄の翼がない
シハイスミレ 披針形 葉は裏面が紫色で、斜め上に伸ばす近畿以南に分布 ヒナスミレの葉は水平。マキノスミレは垂直で、近畿以北に分布
フイリシハイスミレ 披針形 葉脈に沿って白い斑が入る  
エイザンスミレ 深く3裂 太平洋側の低山に多く、日陰を好む ヒゴスミレは基部から5裂
ヒメミヤマスミレ 心形〜
三角形
フモトスミレの亜種で、葉の鋸歯が粗く、裏面は紫色にならない フモトスミレの葉は暗緑色で、裏面は紫色
 
 
   

 
   

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