【嶽ノ森】
古座川弧状岩脈に見られる双耳峰(雄岳376m、雌岳369m)の岩山で、古座川を挟んで一枚岩の対岸に位置する。登山口は、一枚岩トンネルの南側と相瀬橋の西側にあり、山頂でつながっている。
一枚岩トンネル側から登ると、このルートの最大の見所「ナメトコ岩」がある。流紋岩質凝灰岩の壁が水流によってV字谷に浸食されており、百メートルほど続く滑らかな岩肌を流れに沿って登ることになる。ただ、凝灰岩の岩肌は登山靴のかかりがよく、人為的に彫られた足の踏み場が階段状に続いているのであまり滑ることはない。目の高さの岩肌にはイワヒバ(別名イワマツ)が群生している。
この順路で行くと、先に雄岳に到達するが、雄岳山頂から雌岳を眺めた時、山頂の少し下に大きな岩盤が覘いている。こちらの岩石は凝灰岩ではなく「花崗斑岩」で、巨人の横顔に見えることから「巌(いわお)のジャイアント」などと呼ばれている。また、雌岳山頂から雄岳のシルエットも望めるが、こちらはゴリラの横顔に見えるのは私だけだろうか。
雌岳からは下りとなり、途中、花崗斑岩の柱状・板状節理がサイコロを積み重ねたように見える岩礁があり、「豆腐岩」と呼ばれている。一周2時間半の行程である。
【一枚岩】
幅500m、高さ100m
にわたる一枚岩は、割れ目の少ない火砕岩が古座川の浸食を受け続け、表面が滑なめらかになった「流紋質凝灰岩」である。この前の川の流れは緩やかで、私の場合、カヌーを持参して何度も一枚岩よりの流れを下ってみた。
ここでも、イワヒバがところどこに群生しており、乾燥した岩肌では葉全体が内側に巻き込むように丸まっている。また雨などが降って水分が供給されると復活し、渇水期のこの植物の生き延び方だろう。一方、一枚岩の表面に,
白っぽく見えるところがあるが、これは地衣類のヘリトリゴケである。
この大きな岩肌には、夕方ともなると大きな森のシルエットが映し出される。年に2回(4月19日と8月25日の各前後3日間)、「犬の影」となって現れる現象が見られ、この地域に伝わる伝説「守り犬の影」と言われている。 |