Nature Guide
                         くりんとの自然観察ガイド

           
   
 二津野ダムのオシドリ

 十津川村の二津野ダムは、全国有数のオシドリ越冬地としてにわかに注目を集めている。日本野鳥の会の観測では、2007年に約3,300羽とその年の日本一を記録したようだ。『フィールドガイド』によると、オシドリは北海道、本州、九州で繁殖し、留鳥または漂鳥とある。したがって、中部以北で繁殖したオシドリは、積雪で植物性の餌が乏しくなるこの時期、餌場を求めて西日本の各地に飛来してくると思われる。

 今冬の12月以降、二津野ダムに詳しい友人から刻々とオシドリ情報が伝えられ、2010年1月10日、ボートでダム湖を巡りオシドリを観察する好機を得た。過去の3,300羽という数字を聞くと、ダム湖にひしめき合うオシドリをイメージして心は勇むが、二津野ダム湖は広大だ。しかも、水鳥たちは外敵を警戒し風を避けるためか、入り江奥や湖岸に寄り沿っているため、肉眼ではなかなか群れをとらえにくい。幸い私たちは湖上からボートでの観察だったため、平谷付近からダムサイト近くまでくまなく網羅することができた。概算だが、この日先の流域で確認できたのは数百羽というところだろうか。
 「色鮮やかなオシドリの写真を持ち帰ることができれば」と意気込んだが、結果は、上写真の通り。当たり前のことだが、水鳥は警戒心が強い。数百メートル先からこちらの姿に気づいて飛び立ってしまう。追いかけても追いかけても、同じくり返し。スコープでは色鮮やかなシルエットをとらえることができ驚嘆の声を発するのだが、いざ写真となると、飛び立つ姿ばかりとなった。(笑) 撮影に関しては、ダム湖においてはかなり厳しいといえる。

 この二津野ダムが全国有数のオシドリ越冬地になりえているのは、オシドリの越冬期の主要な食物となるどんぐりが豊富で、山深い静かな環境がその好条件となっていると言われている。実際、湖岸にはアラカシやコジイの林が広がっており、6月にはそれらの花が咲いて山肌一面が黄金色になる。オシドリを追いかけていると、水面に近い山の斜面から駈け下りてくる姿を何度も目撃した。おそらくどんぐりなどの餌をとっていたと思われるが、接岸できるところから上陸して落ち葉をかき分けてみると、この時期でも、写真のようなコジイやアラカシのどんぐりをたくさん見つけることができた。
大半の湖岸が急斜面なダム湖ゆえ、水草などは乏しく、この地に降りたオシドリたちは上陸して餌を採らざるを得ないと思われる。
 陸上からの観察には、平谷付近や西川出合など場所は特定されるが、スコープを用意して気長に待てば、むしろ思わぬ写真が撮れるかもしれない。今回、きちんとした数を調査しなかったことが唯一心残りだったが、次の機会も是非得たいと思った。

 

 
   

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