カタクリの開花時期は、新緑の季節に少し早い4月中旬〜下旬。陽光を遮る若葉がない早春こそ、カタクリの成長戦略の好機である。裸木と落ち葉の積もった殺風景な落葉樹の林床には、早くも葉とつぼみが顔を出している。この季節は気温が十分上がらない日もあり、受粉を担う昆虫の種もまだ少ない。そんな時期、ギフチョウがその役割を担う。ギフチョウはカンアオイ類の葉に卵を産み付けるが、金剛山や葛城山の場合、ミヤコアオイである。孵化したギフチョウの幼虫はミヤコアオイ葉を食べて育ち、夏には蛹となってそのまま越冬、早春に孵化する。ギフチョウにとっても、蜜や産卵の場を提供してくれるのは、カタクリとミヤコアオイというわけで、この三者の関係が崩れては、いずれもその地で生息できない。このような早春時の生活スタイルから、ギフチョウやカタクリは「スプリング・エフェメラル」(春の妖精)と呼ばれている。 |