【高野山金剛峯寺から野迫川村大股を目指して】
金剛峯寺の中心は、根本大塔や金堂のある壇上伽藍だと長らく思いこんでいたが、金剛峯寺本坊こそそれであると悟ったのは、だいぶと歳を食ってからである。金剛峯寺前駐車場は、早々に満車となるが、そこから真北に本坊正門がある。ここで道中安全を祈願して、いざ熊野古道小辺路を出発。ここは標高800mの山上盆地である。
明治5年(1872年)まで、高野山は女人禁制であった。女性は高野山へ入れず、「高野七口」と呼ばれる各入口に、お籠り堂としての女人堂が建てられた。七つの女人堂を結ぶ道は「高野山女人道」と言われ、これらの峰々をめぐりながら、当時の女性は大師御廟に手を合わせたと言う。金剛峯寺を出発して熊野大社を目指す小辺路は、「高野七口」のうち、大滝口女人堂跡のある轆轤峠から南へ下る。しかし、しばらくは女人道と重なっており、真別処分岐にて女人道に別れを告げる。
標高約1000m付近の薄峠までは、尾根筋に林道が走っており、車の通行も可能である。薄峠から大滝集落まで整った山道を下る。かつて、民家があったのか石垣だけが段状に残っており、そこには大木に育ったコウヤマキが見られる。仏花用に出荷されているのだろうか、かなりの群集林である。有田川の支流である御殿川にあっかる橋を渡ると、ここから車道の急登である。大滝集落の名前の由来は、御殿川にある落差約10mの「高野大滝」だろうか。先の橋から500mほど上流ところにあるため、今回は、立ち寄る余裕がなかった。橋から標高差150mを登った集落内に、トイレや休憩用の東屋があるので小休止。
ここから高野龍神スカイラインまで、なだらかな古道を歩く。5月下旬、カッコウの鳴き声がこだますると共に、やがてスカイラインを架けぬけるバイクのエンジン音が聞こえてきた。
高野龍神スカイラインに合流してからは、しばらくアスファルト車道を歩くことになる。標高1150m付近の水ヶ峰から、野迫川村の大股へ下る古道入口を左手にとる。ここから先は、古道を利用しながら施設されたアスファルト舗装の車道が大股まで続いており、所々に取り残された古道を迂回しながら下っていくことになる。なんとも味気ないが時間を稼ぐことができる。標高850m付近で、尾根筋に大股まで下る古道入口が現れ一気に下る。
大股集落では、自動販売機の飲物程度しか補給できない。 |