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天水田(かつての水田跡) |
観音堂(水場もあり一息入れる) |
果無峠(標高1114m) |
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「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に
中国・蘇州で開かれているユネスコの世界遺産委員会で、7月2日、奈良、三重、和歌山の3県にまたがる「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録されることが決まった。(以下、資産目録) |
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世界遺産の構成資産 |
霊 場 |
吉野・大峰 |
吉野山、吉野水分神社、金峯神社、金峯山寺、吉水神社、
大峰山寺 |
熊野三山 |
熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社、青岸渡寺、
那智大滝、那智原始林、補陀洛山寺 |
高野山 |
金剛峯寺、丹生都比売神社、慈尊院、丹生官省符神社 |
参詣道 |
熊野参詣道 |
中辺路(熊野川)、小辺路、大辺路、伊勢路(七里御浜、花の巌) |
大峯奥駈道 |
(玉置神社を含む) |
高野山町石道 |
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熊野参詣道・小辺路を歩く
その多くは、これまでにも何度か訪れたところが多いが、「熊野参詣道」については、ほとんど白紙状態である。
で、このたび、その私的空白をうめんと、「小辺路(こへち)」を歩いた。
といっても、小辺路全長約72kmのうちの果無(はてなし)峠越え部分約11.3km。
古道といって、峠といって侮ってはいけない。
例えば、今回の果無峠は標高1114mもあり、他の3峠(下表)もすべて標高1000mを越える。
それぞれの峠越えは、いわば登山であり、それへの備えが必要である。
この果無峠越えのルートは交通の便がよく、登山口にあたる十津川温泉と八木尾が、それぞれ国道168号線沿いにある。
したがって、あらかじめバスの時刻を調べておけば約20分足らずで戻ってくることができるし、車2台で行って1台を先回りさせておくことも、苦にはならない。
他の峠越えはそうはいかず、交通の便が悪く、未だ重い腰を上げる目途がたっていない。(どなたか、よい方法はご存知ですか?) |
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<熊野古道・小辺路の全ルート>
※今回は果無峠越えのルート
起点 |
峠(標高) |
距離(所要時間) |
高野山 |
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↓ |
水ヶ峰 |
19.3km(9時間) |
大股 |
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↓ |
伯母子峠(1080m) |
16km(7時間) |
三浦口 |
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↓ |
三浦峠(1246m) |
21.7km(10時間) |
十津川温泉 |
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↓ |
果無峠
(1114m) |
11.3km(5.5時間) |
八木尾 |
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↓ |
三軒茶屋跡 |
5.6km(1.5時間) |
熊野本宮 |
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果無峠越え33体の石仏
もう一つ、このルートの楽しみは、西国33ヵ所観音霊場の石仏。
大正11年に、地元桑畑の人たちによって、配置されたものだと聞いている。
「今度は、どんな観音様だろう」と足を止め、両手を合わすように、一体一体シャッターを切る。
ちょっとした楽しみとなり、おかげで疲れも幾分和らいでくる。
ただ、私の場合、登り口を「檪砂古バス停」にしなかったことと、最後の八木尾付近でルートを間違えたため、何体かがカメラに収まっていない。
さらに、今になってわかったことだが、どうも第6番の観音様にも、ごあいさつを失礼したみたいである。
みなさま、私の失敗をどうぞ教訓に! |
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新十津川物語をゆく
こちらの熊野古道・小辺路も、平安時代よりの熊野信仰に人々が行きかい1200年の時を刻むわけだが、その歴史の過程に、今一つ興味深い話を聞いた。
明治22年8月、奈良県吉野郡一帯をとてつもない豪雨が襲い、村が壊滅するほどの大水害となった。
そこで、新たな生活の地を求めて600戸2489人が北海道への移住を決断、現・新十津川町への発展を成し遂げた話は有名である。(川村たかし著『新十津川物語』)
故郷を余儀なく離れる苦汁に後ろ髪を引かれながら、神戸へと向かい海路北海道を目指したというのだが、その時歩いた道が、この小辺路というわけである。 世界遺産決定後、最初のこの週末は、十津川・熊野周辺の温泉、たいへんな賑わいだったと聞いている。
しかし、平日を選んで、この古道行けば、道中誰一人として行き交わず、イノシシの土耕跡(えさのミミズなどを掘り返した跡)を道案内に、先の歴史をしのぶことができた。
世界遺産に登録されるほどの資産を、この紀伊山中に抱いているという誇りと共に、自然が不自然になってはいかないかと、やや複雑な心境である。 |
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イノシシも古道を行く(右端、土耕跡) |
果無集落で見つけた初夏 |
八木尾登山口には、杖の無料貸出? |
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