Mountain Guide くりんとの登山ガイド
二上山の落陽は、平安時代の浄土信仰と結びつき、山の向こうに極楽浄土を思い描いたようである。(千股池より)
【ダイヤモンドトレイル】 南は和泉市の槇尾山から始まったダイヤモンドトレイル(以下、ダイトレ)も、ここ二上山を経て香芝市の屯鶴峯で終点となる。槙尾山から始まってと書いたが、正式には屯鶴峯に起点碑がある。ただし、葛城修験の二十八宿経塚巡礼は、第一経塚の友ヶ島(和歌山市)から始まって第二十八経塚の亀ノ瀬(奈良県三郷町)が成満となることから、私の場合、ダイトレも北上が自然なのである。 竹ノ内峠まで北上してくると、そのまま岩屋峠まで直登できるが、大阪府南河内農と緑の総合事務所発行の「ダイトレマップ」では、二上山万葉の森(太子町)まで国道166号線を使って西進し、そこから岩屋峠に導いている。万葉の森にはトイレや自販機もあって、休息にはちょうどいい。二上山に登山ルートは数多くあれど、雌岳への最短ルートはコンクリート舗装のこのコースで、岩屋峠からはダイトレを離れてジグザグ道の急坂を登れば計40分ほどだろうか。 万葉の森は、大阪側の二上登山拠点である。 岩屋峠の南に「岩屋」と呼ばれる凝灰岩の石窟があり国の史跡である。古代の石切場跡を寺院に転用したと考えられ、窟内北壁には三尊仏が彫られている。岩屋の鉄柵内は、ハンゲショウ(ドクダミ科)が群生しており、7月中旬頃に白い花を咲かせている。 万葉の森からダイトレをとらず、国の史跡鹿谷寺跡をめざすルートもある。浸食によって露わになった凝灰岩の路頭をよじ登っていくのは変化があっておもしろい。鹿谷寺跡も古代石切場を転用したと考えられており、それを象徴するかのように凝灰岩の山から掘り出した地続きの十三重塔が残っている。さらに周辺の石窟には三体の如来坐像が線刻されており、寺院の創建は8世紀中頃から後半にかけてと推察されている。 二上山の三角点は、雄岳(517m)ではなく雌岳(474m)にある。雌岳西斜面の笹原には、ササユリがよく保護されており、6月中旬から下旬にかけて開花が見られる。また、初秋には、二上山のヒヨドリバナを求めてアサギマダラが飛来してくる。現在のダイトレコースは、雌岳山頂も雄岳山頂も経由せず、穴虫峠をめざして下っていくが、あとは下りと思いきや、アップダウンの多さに辟易する。穴虫峠大阪側(太子町)の自動車道に出るが、ここから屯鶴峯まで交通量の多い自動車道を歩くことになる。ダイトレ起点の石碑(プレート)は、屯鶴峯入口の右脇にある。 ダイトレは屯鶴峯入口で終わっているが、葛城二十八宿の山林抖擻(とそう)は、関屋を経て明神山、そして亀ノ瀬へと続く。国土地理院の地形図には、屯鶴峯の中を北進して国道165号線に突き出るルートが描かれている。意を決して屯鶴峯の尾根の1つを選び突き進んでいった。しかし、最後は藪漕ぎをしながらなんとか智辯カレッジ付近に這い出るものの、明確なルートはもう少し調査が必要である。
【旧ダイトレ探索】 二上山頂付近からダイトレ起点の「屯鶴峯」へは、現在、大阪府と奈良県の県境に沿った登山道が一般的である。しかし、馬の背から屯鶴峯(現駐車場)まで別の最短ルートがあり、かつてはダイトレとして使われていた。この「旧ダイトレ」ルートは、馬の背西側にある石標にも示されていたが、今は、使用に適さないとみて無地のプレートで隠されている。この「旧ダイトレ」道は廃道になっていないが、屯鶴峯付近にある採石場を通過せねばならず、その敷地への進入口は通行止めになっていると聞いた。ならば、馬の背から行けるところまで下ってみようと、2020年8月試みる。 馬の背からの進入口は、先に示した石標のところだが、祐泉寺から登ってきた登山道のほぼ向かいにある。地形図を見てみるとよくわかるが、傾斜のきつい下りが続き、したがって帰路が思いやられる。当選人気がない登山道であるが、驚くような大きなクスノキが登山道脇に根を下ろしているのに遭遇、かつての賑わいをこんなところに垣間見た。途中、鹿谷寺跡から上ノ池横登山口につながる登山道 (通称“外環ルート”)がクロスしており、このルートを使う登山客には行きも帰りも出くわした。二上山には、登山地図に紹介されていないものの、このルートのように整備された道が多々ある。 巨岩を通り越した後に竹田川源流が現れ、その川をせき止めた池が2つ。この辺りから登山道を覆い尽くす雑草に阻まれるが、登山道は道幅もあり迷うことはない。しかし、今度はいつしかの台風によるものか人工林の倒木がさらに行く手を阻む。道も平坦になり、直線に伸びた登山道の延長線上に夏の陽光が反射した裸地が見え、いよいよ採石場だと心躍る。あと100mというところだろうか、どうしようもない倒木ジャングルに一進一退。とうとう引き返すことを決断した。ここまで馬の背から約1時間。 帰路、登山道に沿う竹田川源流では、ガーネット(金剛砂)を見つけることができると聞いていたので、目的は、旧ダイトレ探索からガーネット探しに転じる。細かな川砂の中に、茶褐色で半透明の粒子が混じっているのだが、それもマクロレンズで撮影した画像から判別できるような大きさである。かつては研磨剤や紙やすりの材料として、二上山産の金剛砂が重宝された時代があったようである。
【所要時間】 ○ 万葉の森・・・岩屋・・・ダイトレ進入路雌岳展望台 (上り・約30分) ○ ダイトレ進入路・・・国道・・・屯鶴峯 (下り・約1時間20分)
Copyright (C) Yoshino-Oomine Field Note