5月中旬、葛城山山頂付近がヤマツツジの赤い花に染まると、ロープウェー葛城登山口駅には何時間待ちという長蛇の列ができる。足で登るにも、駐車場が車で溢れ、一年で最も賑わう時期だ。そこで、一目百万本のヤマツツジは見たいけど、人混みは避けたいという方にお薦めなのが、水越峠からダイヤモンドトレール(略称:ダイトレ)を登るコース。登山マップでは、1時間10分でツツジ園にアプローチできるとあるが、健脚な方なら1時間をきる最短コースである。
現在、国道309号線には水越峠付近に立派なトンネルが通っているが、関屋付近から旧309号線に入り水越峠で路上駐車となる。
ここから金剛山と葛城山にそれぞれダイトレが伸びているので、両方の登山者の車が整列している。ただ、近年は、ヤマツツジ開花期の土日、大阪府警が路駐禁止の取り締まりを行っていることがあるので要注意。
水越峠から葛城山に向けてはしばらく谷沿いに石段が続くが、やがてコナラを中心とした雑木林に入る。スギやヒノキの人工林とは違って、山が明るく秋には黄色く染まるコナラやイヌブナなどの紅葉を楽しむことができる。また、アキグミ、アオツヅラフジ、イヌマキ、コマユミ、ムラサキシキブなどが、それぞれ色とりどりの果実をつけ楽しませてくれる。春にはツツジ類が彩りを添え、ウツギ類、ウメモドキなど旬の花も多い。
途中、終点の見えない丸太階段が現れるが、ここを登り切ればあと一息。穏やかな稜線にとりつくと、ウリハダカエデの大木やミズナラなども見られる。奈良盆地を見渡せる一画には、パラグライダーの離陸場があり、その近くにはリョウブの純林が一画をなしている。さあ、いよいよ一目百万本のツツジ園である。ヤマツツジがさく前には、同じ場所でカタクリやスミレを見つけることもできる。
● 一目百万本ヤマツツジ
「一目百万本ヤマツツジ」と呼ばれる葛城山のツツジだが、歴史はそれほど古くない。葛城高原ロッジができた1967年当時、山頂付近は一面のササで覆われていた。ササは数十年に一度花を咲かせるが、葛城山でも70年頃に花を咲かせ、一斉に枯れた後にツツジが咲き出したという。人の手で植えられたと思うかもしれないが、自生種のヤマツツジである。ただ、遷移の過程で、やがてササや高木が取って代わるはずだが、そこは人の手で草刈りが行われ遷移を食い止めている。現在約5万平方メートルのツツジが維持されているが、もし刈るのをやめたら、再びササ山に戻っていくことだろう。
赤い絨毯を紡ぎ出すのはヤマツツジという品種だが、ここ葛城山には、コバノミヤコツツジやモチツツジも自生する。さらに、モチツツジとヤマツツジが自然に交配してできた雑種のミヤコツツジというのも見られ |