高見山(1248.9m)から大台ヶ原山(日出ヶ岳1695.0m)まで連なる山脈は、「台高山脈」と呼ばれている。
この台高山脈は奈良県と三重県の県境となっている。その西側には、紀伊半島の背骨のように走る大峰山脈があり、遙か昔、河川による浸食をうけて台高山脈と袂を分かったとされている。高見山の南側には、国道166号線に沿って中央構造線が通り、その北側は領家帯(花崗岩)、南側は三波川帯や秩父層群(砂岩・頁岩・チャート・石灰岩など)である。したがって、高見山は花崗岩からなり、それ以南は大台ヶ原山まで秩父層群の堆積岩である。

今回、東吉野村大又から薊岳を登頂し、明神平、国見山、そして再び大又に下山するルートである。大又では、駐車場探しに苦慮するが、この
周回ルートなら、最初に明神平登山口付近の駐車場に停めておくのも一案である。薊岳までの途上に大鏡池(1182.9m)があり、白蛇伝説の伝わる雨乞いの霊地だという。この湿地の植生は興味深いが、5月初旬にはカエルの卵を見かけた。この付近にさしかかる登山道には風化した大小のチャートが見られ、秩父層群のコンプレックスの1つであることを実感する。
薊岳の名の由来はわからないが、雄岳・雌岳からなるこの山の稜線は東西に延び、俗に馬の背と呼ばれるような急峻で鋸状の岩場である。こうしたやせた水分の乏しい場所での生存戦略を見いだしたのはツツジ科の仲間で、山頂より西側の尾根筋にはシャクナゲが群生する。一方、東側に下っていくと地中の水分が集まる傾斜地にはバイケイソウの大群落が見られる。山頂からの眺望は、遮る森林もなく、台高山脈が南北に延びている様は大パノラマを満喫できる。 |