ギンリョウソウは、「ユウレイタケ」とも呼ばれる。その容姿からわかるように、葉緑素を持たない。したがって、光合成をしない。光合成をしないのなら、どうして植物の範疇に入れるのだろう。実は、ギンリョウソウも白く透明感のある花を咲かせ、雌しべと雄しべを抱いている。花は蜜を出し、マルハナバチなどのポリネータ−昆虫を招いて受粉する。葉もかつては存在していたのだろうか、白く退化して茎にまとわりついている。このように、繁殖の形態は種子植物。ただし光合成で自活せず、菌類との共生で養分を得る。こうした植物は「腐生植物」と呼ばれている。(これまで腐葉土から栄養を得ているという記述も多く見られたが、最近、そうでないことがわかってきたらしい。)
さて、ギンリョウソウと菌との共生だが、同一の“菌”が一方では樹木と、もう一方ではギンリョウソウと菌糸でつながり、樹木の栄養を“菌”経由でギンリョウソウが得るという仕組みである。樹木に対して“菌”は水分や窒素・リンなど養分吸収の補助を行い、代わりに光合成で得た有機物を分けてもらうという共生関係が働く。この場合、“菌”は「外菌根」と呼ばれる。
一方、光合成をしないギンリョウソウは、樹木と共生関係にある“菌”に寄生しており、この場合、“菌”は「モノトロポイド菌根」と呼ばれる。つまり、同じ“菌”が「外菌根」でもあり「モノトロポイド菌根」でもあるわけだ。さて、このモノトロポイド菌根はギンリョウソウからどんな見返りを受けているのか、それとも寄生されっぱなしなのか興味は尽きない。
5〜8月
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