金剛山でヤマシャクヤクを初めて見た感動もさめやらぬうち、今度はベニバナのヤマシャクヤクがあることを知った。しかも、県内の観音峰に自生すると言う。この山は標高が低いので、どちらかというと同じ天川村内に登山口のある山上ヶ岳や稲村ヶ岳の方に目が行き、スルーしてきた。しかし、奈良県では絶滅寸前種、環境省では絶滅危惧II類(VU)に指定しているヤマシャクヤクが咲くとなれば、俄然この山の重みが増してきた。
梅雨入りして間もない6月中旬、登山口のある駐車場には車があふれている。花の季節に登山客が多いのはここだけでないが、私が知る前に既にこんなに有名だったのかと、ちょっと悔しい気分。自生地は展望台周辺にあり、息を切らしながら1時間半ほどで到着する。紅色というより、薄い紫色の花弁が、ススキの株の間に見え隠れしている。この花の色の不自然なこと、誰かが植えた園芸種ではないかと疑ってしまうのである。360度眺望の開けた展望地で、達成感を満喫している登山客が多い中、意外にベニバナヤマシャクに気づいている人は少ない。私の場合、一目散で息を切らしながらこの花を目指したのに対し、駐車場にあふれんばかりの車を置いてきた人の多くは、低山ハイキングを楽しんでいるようだ。
とても残念な気もするが、多くの登山客の視界にも入らず、人知れず咲いているヤマシャクヤクもいいのではと、カメラに収め下山する。
6月
北・本・四・九 |