ラピス・ラズリという鉱石の和名は「瑠璃(るり)」。アジアではアフガニスタンなどで産出し、シルクロードを通じて日本にも渡ってきたが、庶民が容易に目にする代物ではなかった。しかし、自然界には意外にもその名の色彩が多く存在し、人々は生き物にその名を与えた。オオルリ、コルリ、ルリビタキ、ルリシジミ、ルリセンチコガネ、そしてヤマルリソウ。
雲一つない突き抜けるような青空。いやいや、まだそれは瑠璃色ではない。しかし、標高が3000mを超すような高い山に登ると、大気が薄くなってくるせいか、宇宙を垣間見たような一層濃い青空へ変化していく。そこは大気圏と宇宙空間の狭間。私は、そこにも「瑠璃色」を見つけた。 さて、ヤマルリソウの株を分けてもらって鉢植えで育ててみた。施肥に水やりと環境が整ったせいか、ずいぶん大きな株に成長し花もたくさん咲かせた。しかし、少し興ざめした感
も否めなかった。そう、私が初めてヤマルリソウを目にしたのは、葛城山の登山道脇の岩場に取り付き、人知れず咲いていた数輪のヤマルリソウ。一服の清涼水のように私の目も心も癒してくれた。多くの山野草がそうであるように、この花も野に在ってこそ美しい。そして、またその花に逢いにそこに行きたくなる。
4〜5月
本・四・九 |