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やまとの花手帖

 
         
         

ロゼット葉で広がるショウジョウバカマ 

ユリ科ショウジョウバカマ属

葛城山(2006.4.30.)

 ロープウェー葛城山上駅から舗装道を歩き、葛城山頂へ上る三叉路の手前にキャンプ場がある。そこを目印に青削(あおげ)方面へ右折すると、人工林の林床にショウジョウバカマの群落が見られる。開花時期は、カタクリとほぼ同じ4月中旬〜下旬。林冠の隙間から光が差し、まるで選ばれた“プリマー”にスポットライトが当たっているかのような光景が見られる。
 「猩猩(しょうじょう)」は、そもそも中国に由来する顔の赤い酒飲みの伝説上の動物である。オランウータンなど大型類人猿の漢名としても使われる一方、深紅色を表す「猩猩緋」という色彩にもあてられる。ショウジョウバエは、代表的な種が赤い目を持つことや酒に好んで集まることから名付けられたようだが、ショウジョウバカマは猩猩緋の花と言うことだろうか。ただ、花の色は深紅色から白に近いピンクまで様々である。
 この植物は、ヒトデのようにロゼット葉を地面に張りつけ、それぞれの葉先から不定芽の発芽がみられる。親を中心に放射状に伸びた様は、幾何学的な分布模様をなす。タンポポなどもロゼット葉をもつが、太陽光を求めてより高く茎を伸ばし葉を支えるという労力を必要としない省エネ型の植物である。この利点をいかすためにも、周りに背の高い草本が茂っていては、陽光獲得競争に負けてしまう。したがって、他の植物が成長を始める前が、この植物たちの独壇場である。

 3〜5月
 北・本・四・九