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やまとの花手帖

 
         
         

自生南限地帯のスズラン 

ユリ科スズラン属

向渕(2004.5.24.)

 5月中旬、室生村向渕(むこうじ)のスズランの花が見ごろであると、新聞が報じていたので車を走らせた。県道28号線を走り、静かな農村の合間をぬけていくと、「向渕スズラン」の立て札が見つかった。平日だったせいか、他の車も見当たらず、駐車場から100mほど山道を登ったところに群落地を見つけた。こちらの群落地は簡単なフェンスで部分的に囲われているが、人の立ち入りを完全に阻むものでもない。よく見れば、スズランの根元にもたくさんの足跡が残り、踏み倒されている個体も多い。どうやらこの週末に、カメラを持った人たちがたくさん訪れたようだ。仰々しいフェンスはない方がいいが、こうなると囲いの設置も仕方ないと思う。
 先の向渕群落地から南西に3kmのところに、もう一つ吐山(はやま)のスズラン群落地がある。国道369号線を南下し、立て看板を目印に田園地帯へ折れていくと、すぐに見つかった。ここは駐車スペースがないので、シーズン中の休日は要注意。吐山のスズランは、管理している自治体が先と異なるせいか、整備も行き届いていて観察しやすい。この2ヶ所のスズランは、「自生南限地帯における群落の代表的なもの」として国の天然記念物に指定されている。本来、本州中北部の高山や北海道に多く自生するが、この地は海抜500〜600mに位置し、県内でも冷涼な地域であるゆえ自生に適している。

 ところで、スズランというのは、写真に収めにくい山野草だ。まず、小さく白い花というのは、オートフォーカスではとらえにくく、ピンぼけが生じる。また、背が低いところに加え花房は下向きで、一眼カメラの窓を覗くには、這いつくばらなければならない。さらに林床は薄暗いから三脚が必要だが、私のミニサイズの三脚でさえ背が高過ぎて使えなかった。先の群落地のたくさんの足跡はそうした戦いの跡だろうか。やっぱり囲いは必要だ。

 4〜6月
 北・本・九