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やまとの花手帖

 
         
         

100年ぶりのサクラの新種発見「クマノザクラ」

バラ科サクラ属

古座川町「池野山のタイプ木」(2019.3.16.)

   2018年2月、「紀伊半島南部で、100年ぶりにサクラ属の新種が発見された」というニュースが駆け巡った。熊野地方(熊野川流域)では、ヤマザクラやカスミザクラも自生するものの、これらより約1ヶ月ほど早く開花する桜が知られていたが、ヤマザクラの範疇でとらえられていた。しかし、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所が、和歌山県林業試験場と共同で、紀伊半島南部(奈良・三重・和歌山県)に新種の野生のサクラが分布していることを確認し、日本植物分類学会が発行するActa Phytotaxonomica et Geobotanica誌に論文が受理された。その名も「クマノザクラ」。
 

クマノザクラの特徴
○ 開花期は、ヤマザクラやカスミザクラより約1ヶ月早い。
○ 熊野川流域を中心としたおよそ南北90km、東西60kmの範囲に多数の野生個体がある。
○ 花序柄が短く無毛、葉身がヤマザクラやカスミザクラよりも小さく卵形。

 先の報道を知るや、すぐにでも駆けつけたいと思ったが、どこに自生しているのか当てもなく気になりながら1年が過ぎた。「十津川にもクマノザクラ開花」というSNS情報を目にするが、果たして本物だろうかという疑念が首をもたげる。一方で、3月中旬、古座川や熊野川流域に自生し開花している桜は、大概「クマノザクラ」と見ていいという話も聞くが、ここは公的機関のお墨付きをもらった「クマノザクラ」の木をまず観察したいと思った。やがて、Web上に「クマノザクラMAP」なるものを見つける。古座川町役場地域振興課・観光協会が公開しているもので、「クマノザクラ」を町の観光資源の一つに活用しようとしているようだ。
 2019年3月、古座川町に車を走らせる。紀勢自動車道がすさみ南I.C.まで伸びており、紀伊半島南端まで随分早くなった。「古座川弧状岩脈」の流紋岩質火砕岩が風化した「高池の虫喰岩」には道の駅もある。そこから地蔵峠に向かって車道を上っていくと、「池野山のタイプ木」があり、「クマノザクラ」の特徴をよく持ち合わせた標本木らしい。私が訪れた時はちょうど満開であったが、桜の花は目の高さに咲いていないため、地面に落ちた花を手に取ってみる。「花序柄が短く無毛」という特徴だが、やはり他種と並べてみないとよくわからない。
 この後、「クマノザクラMAP」を手に、車で古座川町内を駆け巡るが、私の一押しは、峯集落のものであった。一枚岩に向かって国道371号線を北上し、一雨橋を渡ったところで左折。果たしてその先に集落があるのか不安になるが、峯集落をめざす。やがて人工林が開けたところで、満開の「クマノザクラ」の大木が出迎えてくれた。山間にあるため、午後からは大きな桜の枝振りも日陰の割合が増していく。次回は、お昼までに訪れることにしよう。

 3月
 紀伊半島(古座川・熊野川流域)