GW中、金剛山に登って山頂付近のカタクリの写真撮影に四苦八苦していると、「郵便道ではイカリソウが見ごろでしたよ」と、ご婦人の登山客が声をかけてくださった。時間のできた2週間後に登るが、花はほとんど終わりかけであった。しかし、登山道沿いには見事なイカリソウの群生地が存在することを確認でき、一人興奮したことを思い出す。
この花の形状が、碇に似ているためその名が付けられているものの、なかなか記憶に留まらない独創性を要している。碇形の4つの突起部分は、花弁が管状化したもので、その奥は蜜を溜める距となっている。さらに、この4つの花弁のつけ根にはそれぞれ1つずつのガク片がつく。でも、こんなに細長い距の蜜を集めにくるポリネーターとはどんな昆虫だろう。
一方、この種子にはエライオソーム(脂肪酸、アミノ酸、糖からなる化学物質)が付着しており、アリの好む物質としてアリ散布戦略を企てている。カタクリやスミレ、オオイヌノフグリなどの種子も同様の戦略をとっている。私の友人は、「何でも自分で抱え込まず、うまく隣人の力を借りる術」をイカリソウの種子から学んだと言っている。
余談になるが、中国原産の同属ホザキノイカリソウは、「淫羊藿(いんようかく)」という生薬で精力剤として有名である。逸話としては、これを食べた羊が日に百回コトに及んだということらしい。イカリソウの有効成分イカリインには、平滑筋が弛緩し陰茎などの血流が増える効果があり、いわゆる薬草版「バイアグラ」というわけだ。ただ、日本産のイカリソウにはどれだけの有効成分があるのか、またヒトにはどれだけ作用するのか、自己責任でどうぞお試しあれ。
4〜5月
北・本 |