ヒヨドリバナは、筒状の花がブーケのようになっており、この1つ1つから、花柱の先が2岐して飛び出している。これが見分けるための大きな特徴となっているが、山野ではやはり地味な花の部類である。しかし、渡りをするチョウで有名なアサギマダラが、この花を好む。いやこの花でなければならない理由があるのだ。アサギマダラのオスは、性フェロモン分泌のためにピロリジジンアルカロイド(PA)の摂取が必要と考えられており、そのPAがヒヨドリバナの仲間に含まれているそうだ。
また、ヒヨドリバナの仲間に、フジバカマという山野草がある。山上憶良が万葉集の中で、「萩の花 尾花葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝顔の花」 と詠んだ秋の七草の1つだが、こちらは美しいピンク色の花を咲かせるためか園芸種もたくさん出回り花壇を彩っている。フジバカマの場合、山野では滅多に見かけることはなくなった一方で、ヒヨドリバナは、山地にも里にも見られ、運がよければアサギマダラとのツーショット写真を手に入れることができる。
私は、我が家の庭に、ヒヨドリバナとフジバカマの両方を植え、花を楽しんでいる。というより、アサギマダラの飛来を期待してのことなのだが、この蝶の渡りの途中に、我が家を発見して立ち寄ってもらうには、まだまだ新参者です。
8〜10月
北・本・四・九 |