Field Guide
                         くりんとのフィールドノート

           
   
 トロッコで行く湯治場・湯ノ口温泉

 熊野の襞は深い。釣りにキャンプに温泉、カヌー、古道と、何度も足を運んできた熊野だが、 昭和の時代に大規模な「紀州鉱山」なるものが存在していたということを初めて知った。そして、その歴史に由来するトロッコ列車 に乗って、今は薄れつつある湯治場の温泉を訪れたのだ。
 三重、和歌山、奈良県との県境にあったこの鉱山(現在・三重県熊野市紀和町)は、古くは奈良時代、東大寺の大仏が造られた時も多くの銅を献上したと言われ ている。そして、昭和9年より石原産業の資本が入り昭和53年に閉山するまで、紀州鉱山として大規模な採掘が行 われ、長大なトロッコ路線ももっていた。現在、そのうちの小口谷駅−湯ノ口温泉駅間が観光用に営業運転されて いるのだ。紀和町には、鉱山資料館があり、今なお残る廃坑跡をたどっていくことができる。

 さてこの日は、田戸からジェット船が行きかう瀞八丁をカヌーで約2時間半下ったあと、湯ノ口の入鹿温泉瀞流荘付近で上陸、瀞流荘駅からいよいよトロッコに乗車する。 熊野川河岸に位置する瀞流荘は、今どきの大型温泉施設で、内風呂、露天風呂、サウナ以外に、温水プールも備えている。しかし、この日の目的 地は湯元山荘湯ノ口温泉。トロッコは1日に6往復なので、出発の時刻をあらかじめ調べておく必要がある。
 遊園地の列車を思わせるような客車に背を丸めて乗り込み、いくつかの坑道用トンネルをぬけて約1km10分間で湯ノ口温泉に到着。 実は、この温泉地まで車道がついている。しかし、トロッコを利用することによって、ジブリ映画の「千と千尋の神隠し」で、かつてのテーマパークにもぐりこみいつしかタイムスリップしていくようなそんなシーンを疑似体験できるのだ。この温泉は昔ながらの湯治場の風情と施設を備えており、自炊をしながら長期滞在するための格安な宿泊施設も立ち並んでいる。泉質はナトリウム・カルシウムの塩化物温泉で45.7℃で湧き出しており、リウマチ、婦人病、消化器系疾患などに効くという。カヌーのツーリングで少々冷えた体に、少し熱めのお湯がしみこんでくる。この日はシルバー・ウィークの真っ只中で少々込んでいたが、普段はひっそりとした知る人ぞ知る秘湯だと察する。

 長期滞在しながらの湯治に興味津々だが、そちらはリタイアー後の楽しみとして、今一度、奈良時代まで遡ることのできる「紀州鉱山」を探訪してみたい。

牽引車はバッテリーロコ  軌間610oの鉱山鉄道

左岸には湯治客用のバンガローとコテージ  入浴料とトロッコ往復がセットになって600円と安い
 
 
   

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