Field Guide
                         くりんとのフィールドノート

           
   
 氷瀑御船の滝(みふねのたき)

 2012年2月1日、気象庁によると、北海道・東北の上空約5000メートルには、氷点下42度以下の寒気が流れ込み、この冬一番の寒さとなった。日本海側を中心に記録的な大雪をもたらし、奈良県内でも厳しい冷え込みが続いている。去年、空振りに終わった御船の滝の氷瀑は、この週末がチャンスだろうと、4日午前8時半家を出た。この日はアウトバックでなく、新品のスタッドレス・タイヤ4本をはかせているワゴンRでの出発。しかし、井光川オートキャンプ場まであと400〜500mというところで、急な上り坂にあえなくスリップ。スタッドレスは万能と思いきや、つるつるに磨かれた雪道の上り坂は、あと四駆という能力が必要と再認識した。(スタッドレスのアウトバックは、私の前をなんなく通り過ぎて行った。)
 標高550mのキャンプ場まで車で上ってくれば、ここから標高900m付近の御船の滝まで1時間弱の登山となる。とは言っても、雪がなければアスファルト舗装の車道なので歩きやすい。ただし、アイゼンは必携となる。渓流沿いにウラジロガシが多く、他にモミの大木やクマシデ、サワグルミなども見られる。川に目をやれば、カワガラスやカケスも生息しているようだ。雪道は哺乳類のアニマル・トラッキングも楽しみである。この日は、テン、ネズミ類、あとニホンリスの足跡も確認できた。
 途中、「井光鹿(いひか)の井戸」を示す道標に出会うが、歴史に目をやれば記紀の時代にさかのぼる。
  (神武天皇が)
そこより幸行せば、尾生ひたる人、井より出で来たりき。その井に光ありき。
  ここに「汝は誰ぞ」と問ひたまへば、「僕は国つ神、名は井氷鹿と謂ふ」と答へ白しき。
  
こは吉野首等の祖なり。(『古事記』より抜粋)
 ここ井光の里は、神武天皇が八咫烏に導かれ橿原の宮を訪れる途上、
井光鹿という国つ神に出会ったところなのだ。尾っぽをはやした人が出てきたという光る井戸跡が残るらしいが、ここは無雪期に訪れることにしよう。

 車道からはずれて山道に入ると、さらに、モノトーンの雪世界が現れる。100mほどで、青く光る氷塊が姿を見せた。案内の立札には、春夏秋には「十三尊佛の姿と十六善神様」が、そして、凍結期には「文殊菩薩」が姿を現す滝だとある。また、滝の上には「井光神社の守護神勝利の社」が鎮座していると。
  うつ水に かくれし佛 拝み行く我が手に数珠は なけれども (明堂・詠)
 今は凍結期。さて、文殊菩薩がお出迎えしてくれただろうか。ページ内の画像は、すべて1本の滝。見る角度によっていろんな表情をとらえることができる。あなたの「文殊菩薩」をお探しあれ!

 
   
 
 
 
   

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