Field Guide
                         くりんとのフィールドノート

           
   
 談山神社から御破裂山 へ
御破裂山山頂付近のブナ(左)とアカガシ(右)の大木

 『多武峰縁起』には「中臣連、皇子を将いて城東の倉橋山の峰に登り、藤花の下に撥乱反正の謀を談ず。」と記され、いわゆる大化の改新(645年)が成し遂げられる。この後、多武峰は「談峯」「談い山」「談所が森」と呼ばれるようになり、大化改新談合の地としての伝承が残り、鎌足公の御墓もこの地に改葬され祀られたのが談山神社の始まりである。
 世界唯一の木造十三重塔(重要文化財)や春・秋に行われるけまり祭、その紅葉の美しさなど、春夏秋冬それぞれ趣がありにぎわいを見せる談山神社だが、その裏手にある御破裂山(ごはれつ ざん)まで足を向ける人は少ないだろう。実は私も、今回初めて訪れた。

 けまりの庭から権殿を左手を上っていくと、「御破裂山これより徒歩20分」と示した道標の立つ登山口にさしかかる。コウヤマキ、ミズキ、アサダ、アラカシ、アカガシといった大木には樹種を示す名札がかけられ、鬱蒼とした常緑広葉樹の森にもぐりこむ。そのまま真っすぐ御破裂山をめざしてもいいが、途中、謀を談じたという「談い山」を示す道標があり、そちらも往復しておきたい。そこにはアカガシの木をたくさん見つけることができる。ちなみにアカガシは、奈良県内において標高600〜1000m付近に自生する常緑広葉樹で、奈良盆地においてはまず見かけることのない樹種である。
 取って返して人工林を抜けるとほどなく御破裂山山頂(標高618m)。ここには鎌足公の御墓があり、山頂そのものが墳墓の様相をなしている。こちらにもアカガシの大木が多いのだが、その中になんとブナの大木も見つけてしまった。ブナといえば、紀伊山地においては標高1000〜1500m付近に自生する高山性の落葉樹で、600m余りしかないこの多武峰においてはなんと説明を加えればいいのだろう。もはや見間違いかと足元の落ち葉を捜してみると、ブナの落葉どころかその殻斗もたくさん落ちている。ただ短時間で他のブナの木を見つけることができなかったのだが、この大木の幹周りを測ると2m40cm。昨日今日植栽されたものでもないのは明らかだ。

 少々謎めいた山頂の植生に首をかしげながら、帰路は明日香方面へ抜けることのできる西口の分岐をめざした。この分岐から石舞台古墳まで1時間15分ほどの行程と聞く。さらに、ここから北へとって県立万葉文化館の方へぬけるルートや南に向かい冬野から吉野や明日香へぬけるルートもある。次は新緑か紅葉の時期を選んで歩いてみたい。

ブナの落葉と殻斗  山頂には鎌足公の御墓  アカガシの堅果
19年秋に落慶したばかりの桧皮葺き十三重塔
 
 
   

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