Field Guide
                         くりんとのフィールドノート

           
   
 曽爾高原のススキ

お亀池を望む

銀色に輝く尾花

倶留尊山(くろそやま)山頂付近を見上げる

●国立曽爾青少年自然の家
 
学生の頃、自然体験学習として「国立曽爾青少年自然の家」を利用した人も多いのではないだろうか。そのプログラムの中では、たいがい登山が設定され、お亀池付近から見上げた亀山の稜線は美しいのだが、実際は息絶え絶えに登った思い出も用意されている(笑)。10代の頃はそんな自然の美しさに寄り添うよりも、都会やテレビから流れてくる刺激に反応したものだった。したがって私の場合、「曽爾=自然の家=合宿=しんどい登山・めんどくさい野外炊飯」とインプットされ、その後、プライベートで曽爾村に足を向けることはまずなかった。「ススキの曽爾高原」と耳に入ってきても、地味なススキの尾花のどこが美しいのだろうと、左から右へ通り抜けていった。
 台風一過の3連休は、体育の日にふさわしく3日間とも秋晴れ。さすがに、3日目ともなると青空が呼んでいて居ても立ってもいられなくなる。新聞の一面には「銀色に輝くススキの曽爾高原」の記事が目に飛び込む。いくら青空の3連休とはいえ、わざわざ曽爾村までススキを見に行く人もさほど多くないだろうと、午前
11時に車で家を出た。
 曽爾川に架かる橋までは快調に飛ばしてきたが、ここからまさかの渋滞。橋から高原入口の駐車場まで普段なら5〜
10分のところ、約1時間かかった。そして、私のグレイな曽爾高原のイメージを払拭する風景が、目の前に大パノラマとなって飛び込んできた。

●曽爾高原
 ここは室生赤目青山国定公園。その中の室生火山群は、倶留尊山、小太郎岩・鎧岳・兜岳・屏風岩・香落渓・赤目四十八滝などを有し、火山群を代表する柱状節理の火山地形に優れている。その倶留尊山(くろそやま)日本300名山の一つに数えられ、この山から亀の背に似た亀山を結ぶ西麓に広がるのが曽爾高原。
 この高原のススキは曽爾村の萱葺き屋根の材料として長年使われてきたようだが、萱葺き屋根の減少や杉などの植林で高原消滅の危機もあった。しかし、この景観を残す為に奈良県に保護を嘆願し守られるようになったと言う。つまり曽爾高原は、昔は採草地や萱場として今は観光地として、人の手が積極的に加わり、ススキを主体とした草地の状態で遷移が止められている。実際には、毎年
3月中旬頃に山焼きが行われているようだ。奈良の若草山同様、山焼きをやめればたちまち遷移がはじまり、やがて雑木林へと姿を変えていく。
 お亀池と呼ばれる湿地帯は、かつての噴火口を思わせる如くカールの底にあり、四季折々の花を咲かせる貴重な植生を有している。

●ススキの見ごろ
 
 さて、この見事なススキヶ原も3回変化するという。
10月上旬〜10月中旬
 ススキの穂がほどけはじめ綿毛が出てくるが、赤いススキの穂も混在している。また、お亀池などではウメバチソウなども咲いていて山野草も楽しめる。
2009年は919から1018日まで、お亀池のまわりを300個の燈篭が立ち並び、曽爾高原の夜を飾る「山灯り」イベントが行われている。
10月中旬〜11月上旬
 ススキの穂が完全にほどけ、風がなびくと銀色の流れる穂波が美しい。
11月上旬〜11月下旬
 完全に葉も茎も枯れて一面が黄金色になる。写真でよく出るのはこの季節だが、末になると穂が飛び始めまばらになってくる。

●曽爾高原ファームガーデン
 この日は午後3時前に下山したが、それでも高原行きの車道には車の長い列がとぎれることなく続いている。実は、「曽爾高原のススキおすすめ時間」として、天気のよい日、夕陽が沈む前の
20分くらいの一時ススキの穂は逆光を浴びて黄金色に染まると紹介されている。この風景を撮るためにカメラマンがひしめきあっているらしく、曽爾高原のススキを紹介するポスターや写真は、この時間帯のものが多いらしい。
 麓には、地ビールや自然派料理を味わえる「すすきの館」、もっちり感で人気の米粉パン工房「お米の館」などが揃う総合観光施設「曽爾高原ファームガーデン」があり、この日はここも駐車場から車があふれている。「お亀の湯」という曽爾高原温泉も人気で、ススキを見て一汗かいたあとは温泉につかって高原地ビールというのが定番らしい。かなうなら、今度は静かな平日の秋晴れの下、夕陽をねらってまた来ようっと。

 
 
   

Copyright (C) Yoshino-Oomine Field Note