村の入り口付近の川に「勧請縄」と呼ばれる大縄を掛け渡し、川下から川を道にして上がってくる悪霊を伏せぎ、村内の安全・疫病祓いや五穀豊穣を祈願する「勧請掛け」という年頭の行事が、今も県内各地に残っている。
なかでも、明日香村稲渕・栢森の綱掛祭が有名である。稲渕の男綱は成人の日に、栢森の女綱は1月11日に、男女それぞれの性器をシンボル化した藁の造形物が掛けられる。1月5日に行われる大淀町畑屋のカンジョウナワのように、お正月に飾るしめ縄を大きくしたような勧請縄が一般的なのに対して、男綱・女綱が祀られるのは、やはり子孫繁栄や五穀豊穣を祝ってのものと考えられる。
男綱・女綱でいうと、桜井市の江包・大西のお綱祭りのは、とてつもなく大きい。まず、2月9日に春日神社(桜井市江包)で男綱づくりが行われ、翌10日に市杵島神社(桜井市大西)で女綱づくりが行われる。そして、2月11日には、両方の綱が素盞鳴神社(桜井市江包)で合体する「入舟の儀式(結婚の儀)」が執り行われる。両地区では、「入舟の儀式」にあわせて泥相撲もとられており、古くからの田遊び祭りの要素も見られる。やはり、豊作を祝う儀式だと考えられる。
上記以外にも、桜井市の鹿路、針道、小夫、さらには天理市下仁興町の各村にも、勧請掛けが残っている。 |