大峰奥駈道を縦走している時、八経ヶ岳山頂で休憩をとっていると、座り込んで伸ばした足の先の方にネズミがチョロチョロと動くのを見つけたことがある。カメラを取り出している間に姿を消してしまったが、チョロQのような小さな体と長い尾が目に焼き付いている。おそらくヒメネズミだったのだろうと、今になって思う。
ヒメネズミは森林に棲むネズミで、標高が1000メートルを超えるとヒメネズミが優勢になってくると言われているが、近畿地方では標高2000メートルくらいまでアカネズミが分布しており、大台ケ原でも両者がみられる。したがって、フィールドサインだけでは、なかなか両者を見分けることは難しい。両者の違いは、大きさや尻尾の長さ大きな相違点だが、あと樹上生活を得意とするヒメネズミは、野鳥の巣箱に営巣することもあり、そうした行動パターンも考慮に入れたい。
アカネズミが頭胴長8〜14cm、体重20〜60g、後足サイズ22mm以上で、目が大きく飛び出しているのに対して、ヒメネズミは頭胴長7〜11cm、体重10〜20g、後足サイズ21mm以下と小さい。また、ヒメネズミは尾率が100を超えるほど尾が長いので、頭胴長を超えるほどの長いしっぽであればこちらである。
アカネズミもヒメネズミも土中に穴を掘って巣穴を形成するが、ヒメネズミの方が小柄な分だけ器用なのか、樹上での活動が得意で、夏から秋にかけてはほとんど樹上で生活している。したがって、樹上での昆虫の狩りなども上手で、食性も動物食への依存度が強い。ゾウムシの幼虫の入ったドングリとそうでないものを与えると、虫食いドングリを選び、まず中の虫を食べるという。
山小屋や人家などにもよく入ってくる野ネズミは、たいがいヒメネズミの方だと言われている。
北・本・四・九 |