イヌが電信柱に尿のマーキングを行うように、積雪のあとキツネの足跡をたどっていくと、ちょっとした突起物に尿のマーキングがみられる。また、大きな糞を1本、よく見えるところに残しておく習性も、キツネ同士の臭いによるコミュニケーション(縄張り主張)と言える。その糞には、動物の骨や毛が混じっていることが多い。キツネはネズミ類を中心とした肉食性だが、昆虫や果実なども食べる。足跡はイヌのものとよく似ていて紛らわしい。冬場
は、猟にイヌが大活躍するので、それと混同しないよう総合的な判断が必要だ。
一般的に、キツネは草地や畑地など開けた環境に、同じイヌ科のタヌキは開けた草地や畑地と森林とが接する林縁に棲息する。ちなみに、イタチ科のアナグマは森林や雑木林の中で見かけることが多い。
さて、日本人の生活には、古来よりキツネがよくつきまとう。森林から里山まで生活範囲は広いが、餌がないときは家畜を襲ったり残飯を漁ったりと人里近くに現れる。この場合、「キツネが騙す、化かす」などと敵視した逸話が多い。一方、全国に存在する「稲荷神社」がそうであるように、神格化された一面もある。後者の場合、農耕民にとって天敵のネズミを捕獲する益獣として歓迎されたのだろうか。こうした日本人とキツネの関係は、とても興味深い。
日本でキツネと言えば「アカギツネ」しかおらず、その生息地は北アメリカからユーラシア大陸全土に及ぶ。したがって亜種も多く、日本の場合、北海道に生息するキタキツネと本州以南のホンドギツネの2つの亜種が見られる。ホンドギツネの頭胴長が52〜76
cmなのに対して、キタキツネは60〜80cmとひとまわり大きい。
イヌ科だが群れず、メスは小さな家族、オスは単独行動が多い。交尾期は12月中旬から2月上旬、妊娠期間は約52日間で3〜4頭を出産する。キツネは穴を掘るのが得意な動物だが、こうした巣穴は子育てのみに利用され、あとは時々訪れてマーキングをしたりする程度である。オスもしばらくは子育てに参加するようだが、前年度までに生まれたメス(ヘルパー)が子育てを手伝う母系社会である。したがって、オスの子は生後7〜8ケ月で家族を離れる。
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