Life in the wood
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 ● 竪穴住居をつくる

この敷地内に、竪穴住居跡20棟が発掘調査されている

 エコロジカルな生活に関心を抱き、自身の生活に少しでも取り入れたいと思っている人間にとって、縄文人の生活はとても興味深い。衣・食・住の中でも、縄文人の「食」は、今の食生活に重なる部分も多いし比較的取り入れやすい。一方、「住」の竪穴住居の具現化は、最も骨折りな内容だが、一度はチャレンジしてみたい好奇心の中の最たるものである。
 今回、竪穴住居の復元に取りかかる過程で、一番の難関は屋根であった。当初は、稲刈りのあとの稲わらをいただいて屋根材にしようと目論んだが、その丈の短さゆえ扱いにくく途方もない量が必要となることに直面し棚上げとなった。結局、ススキの茎を材料とする茅葺きが、屋根材として優れその調達も容易であることから茅葺きを採用した。今回、ススキに目を向け始めると、道路の法面やため池の周辺など、様々なところに立派なものが自生しているのに気がつく。さらに冬になると、乾燥させる必要のないススキの立ち枯れが目立つようになる。
 歴史公園などでよく見かける復元竪穴住居でも、大概茅葺き屋根が採用されている。一般向けの公開を前提とした場合、安全面や耐久性を第一とした設計が優先されるのだろうか、神社仏閣などにみられる重厚な茅葺き屋根が、どの竪穴住居にも一律そのままのっかっている。しかし、縄文人や弥生人が建てた竪穴住居は、あんなに立派な茅葺き屋根をもっていたのだろうか。少なくとももっと多様な屋根のバリエーションがあっていいはずである。移動生活の多かった縄文人は、材料を現地調達したか、パオ(モンゴル)のような組み立て・解体が容易な工法で何度も再利用したと考えられるゆえ、屋根材は茅だけでなく様々な木の葉や土なども使われたのではないだろうか。ただ、稲わらの生産は弥生時代以降となり、しかも十分な量は確保できなかったと考えられる。
 茅葺きや藁葺きの家は、私が子どもの頃(昭和40年代前半)、民家にも見ることができた。その頃、屋根の葺き替えを手伝った経験のある人も今なおご健在であるが、ぼちぼち70を越す年齢となる。そうした方々の経験値もお借りしながら、決して重厚な茅葺きではないが、現実的な竪穴住居が完成した。

   
直径5mの竪穴を掘る   直径15〜20cmの杉の柱材   約2m間隔で柱を立てる
   
貼り材は杉の足場材で   約30cm間隔で茅葺き用の竹を入れる   茅とはススキの茎を乾燥させたもの
   
軽トラ3台分の茅を準備しただろうか   荒縄を茅に通すための竹製縫い棒   高所作業は古い竹の足場を利用
   
てっぺんは杉皮で雨漏りを防ぐ   住居内にきった炉   竹製のベンチで炉を囲む