Life in the wood
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  黒部平の小屋秘伝・ 岩魚料理  

 黒部ダムの上流に「平ノ小屋」という山小屋がある。職業釣り師としてこの地に小屋を設けた祖父から数えて3代目のご主人。度々マスコミなどでも紹介され、黒部の自然をはじめ イワナ釣りにも精通しておられる方である。何度か、骨酒を飲みながら聞かせていただいた話には、聞くたびに1つ1つ哲学が感じられた。さてこの度は、ご主人から教わった イワナ料理の極意をご紹介。

<岩魚の塩焼き>
○ 釣った魚は暴れさせず、その場で頭をたたいてしめる。(その場で、腹を割いては駄目。)
○ 釣ったすぐのイワナは、割り箸をつっこんで曲がるのを防ぐ。
○ 1時間半ぐらいかけて、ゆっくり水分をとばす。
○ 焼き魚用グリルの場合、下の皿に水を入れないで5分毎に裏返す。

<岩魚の骨酒>
○ 塩焼きよりもさらに30分長く素焼きにし、尾ヒレを焦がさず残す。(3回熱燗に浸しても崩れない焼き具合。)
○ 口を開けて焼くこと。頭と尾ヒレにこくが出る。
○ 最後に醤油を垂らす。実は、2杯目からがおいしい。

<岩魚のあらい>

○ 釣ったイワナを砂に落とすことなく暴れさせず、活かして持ち帰る。
○ 水を一切使わない。(水を使うと水っぽくなる。)
○ 川魚の臭み(表面のヌルヌル)を身につけないことがコツ。そのため、包丁・ 俎板・手を何度も布巾で拭い、親指を残し手で身を触らないこと。
○ 頭に向かって2〜3筋ずつ斜めに包丁を入れ、中骨を半分に切っていく要領。 
○ 刺身にしたイワナは、食べるまでに冷蔵庫か冷凍庫で冷やすこと。

 イワナやアマゴ、アユといった川魚はなんといっても塩焼きが一番うまい。ただし、台所によくある焼き魚用グリルで焼いては、その美味しさも半減する。グリルの場合、受け皿に水を入れ両面から加熱をするわけだが、それでは魚を蒸し焼きにしたようなもので、多くの人は脂ののったサンマと同じ焼き方をするのだ。そして、湯気のたったアツアツの塩焼きを見て、「おいしそう!」と勘違いをする。
 囲炉裏端で、竹串に刺してゆっくりと時間をかけて焼かれたイワナこそ、絶品であることを思い出してほしい。そうした焼き具合を家庭で再現するためには、七輪であれグリルであれ、弱火でゆっくりと時間かけて焼き、魚の持っている水分をすっかり蒸発させてしまう必要がある。私の場合、台所で済ませたい場合は、セラミックの石綿のようなものがついた焼き魚用の網をガスコンロに載せ、しょっちゅう魚の裏表をひっくり返しながら、弱火で最低1時間はかけて焼く。もはや湯気などは立っていないし、釣った時のサイズは見る影もなくなってしまっている。
 腕のいい釣り師は、腕のいい調理人でもある。