Life in the wood
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  森の文庫 (研究書)

 

  書 名 くりんとのレビュー

大峰山・大台ヶ原山
自然のおいたちと人々のいとなみ
大和大峯研究グループ ・著/
築地書館

  この本のタイトルが、月並みなガイドブックを連想させるようでよくありません。ところが、ひとたび読み進んでいくと、大峰・大台の専門的な地質学がとても平易に解説され、今までとっつきにくかった岩石に目が向くようになる。山歩きの楽しみがまた一つ増えた。

葛城の峰と修験の道
中野栄治・著/
ナカニシヤ出版

  友ヶ島の序品窟から大和川の亀ノ瀬まで、役行者が法華経八巻二十八品を埋納したとされる葛城二十八宿の経塚を紹介したもの。大峯奥駈道七十五靡に比べて、葛城二十八宿の経塚は巡礼する修験者も少ないが、それゆえ著者自らのフィールドワークに基づく成果は貴重である。

大峯奥駈道七十五靡
森沢義信・著/
ナカニシヤ出版

 山に入る目的は人ぞれぞれだが、大峰山系にはもう一つ「靡(なびき)」を訪ねる楽しみがある。言わずと知れた大峰奥駈道は、永年修験者たちによって受け継がれてきた信仰や行場があり、一般登山者も追体験できるところが多い。そうしたことに興味がある方は、是非手にしてほしい一冊。

和州吉野郡群山記
―その踏査路と生物相ー
御勢久右衛門 ・編著/
東海大学出版部

 江戸時代後期紀州藩の藩医であり本草学者の源伴存が、藩命を受けて紀州一円や大和国などに調査に赴き著した地誌・博物誌。大峯山や大台ヶ原山など吉野地域の自然、地理、民俗に至るまで著した記述は、歴史的資料としてもとても興味深い。。

松浦武四郎大台紀行集
松浦武四郎 ・著/
松浦武四郎記念館発行

  これまでに発表されなかった明治十八年から二十年にかけて、武四郎が三回の大台ヶ原登山を行った際の自筆旅行記を活字化したもの。当時の登山の様子や大台ヶ原の動植物も記載され、とても興味深いものである。松浦武四郎記念館HPより郵送で購入できる。

大台ケ原の自然誌 -森の中のシカをめぐる生物間相互作用- 
柴田叡弌,日野 輝明・著
東海大学出版会

  大台ヶ原の森林衰退の原因を、ニホンジカだけに押しつけるのは人間の傲慢である。森とシカと人との関係を、最新のデータから読み解いてみると、新たな発見がある。大台ケ原をステージに、森林生態系の再生を考える。

栽培植物と農耕の起源
中尾佐助
・著/
岩波新書

  照葉樹林は日本南西部から台湾、華南、ブータン、ヒマラヤに広がる植生であり、この地域一帯に共通した文化が成立するという。そして、それらの文化伝播によって色濃く影響を受けたのが西日本の縄文文化というわけである。

鬼の研究
馬場あき子・著/ちくま文庫

   時は八世紀末。東北には、森の恵みを受け大自然と共生しながら暮らす蝦夷がいた。しかし、その平和も大和朝廷の侵攻によって破られ、望まぬ戦いが始まる。森との共生から農耕へと移り変わっていく、この頃の日本を描写した数少ない一冊。

山に生きる人びと
宮本常一・著/河出文庫

   柳田國男の研究に影響を受けた著者は、やがて民具や被差別民、漂泊民といったものに光を当て、柳田とは一線を画した民俗学を追求していく。紀伊山地の襞にある木地師の里大塔篠原(現五條市)にも長く調査に入り、本著にも記述が多く見られる。

銃・病原菌・鉄〈上・下巻〉
-1万3000年にわたる人類史の謎-
ジャレド ダイアモンド・著/草思社

  約500万年前に誕生した人類が、どのような過程を経て現代の文明を持つに至ったのか、また、どうしてその誕生・発展が、アフリカ大陸でもなく、南北アメリカ大陸でもなく、ユーラシア大陸なのか。ホモ・サピエンスが歩んできた侵略と淘汰の歴史を、全く新しい手法で解き明かす。

大和吉野川の自然学
御勢 久右衛門 ・編著/
トンボ出版

 吉野川水生昆虫の第一人者である御勢氏が、長年のフィールドワークによって蓄積してきた吉野川の歴史・文化を、聞き取り資料や写真によって紹介されている項が、やはり一番面白い。 氏の手法そのものも学ぶことのできる一冊である。