Guitar Case 108

Guitar Case > 2019

木下大サーカス

 2019年2月、58回目の誕生日に、梅田で開催されている木下大サーカスに行ってきた。
 小学生の頃(昭和40年代)、私の住む田舎町にもサーカスがやって来た。こちらは多分キグレサーカスだったと思うが、指定されたキャラメルの箱を持って行くと割引となった。足場丸太を組んだ薄暗い観客席で初めて観た、空中ブランコ、猛獣つかい、人を消すマジック、なかでも爆音を立てた曲芸バイクは強烈な印象として記憶に残っている。

 あれから約50年ぶりに観たものは、そのサーカス団の規模や観客動員力も桁違いだし、仮設テントも近代化されている。販売されているノベルティ・グッズや食べ物も、テーマパークを連想させる。私が陣取ったのは特別自由席。テントを支えるための鉄製の大きな柱が何本も立っているが、自由席の場合、柱による死角の少ないところを確保するのが肝心だと悟った。

 サーカスにはクラウン(ピエロ)がつきものだが、2時間余りのショーを見終える中で、その役割があらためて見えてきた。
@ 演目が開始される前に、場内の空気を温める役割(前説)。
A 見ている側にとって緊張の場面が連続する中、笑いという緩和の役割。
B 準備に時間がかかる演目の前の時間つなぎで、曲芸と曲芸の連続性をもたせて客を冷めさせない。
C 客をいじっては、ステージと客席の距離を縮め場内の一体感をかもしだす。
D ジャグリングなど確かな技も持ち合わせており、曲芸を身近に感じさせる役割。
 とりわけ、Aが一番の大きな役割だと思った。日本の歌舞伎にも、看板役者の一枚目、若い人気役者の二枚目、そして道化役の「三枚目」という立ち位置がある。洋の東西や演技の中身は変われども、欠かせない存在である。

 

 さて、この日観た木下大サーカスのプログラム内容は、ジャグリングにイリュージョン、動物(猛獣)ショーに空中ブランコと、呼び名こそ変われ大まかな内容は50年前のサーカスとほとんど変わらないことに驚いた。美女が消えるイリュージョンもアイアンボール(球形の金網)内で複数のバイクが走り回る曲芸も、小学生の時の記憶と同じだった。これは決して否定的な感想を述べているのではない。あの時の曲芸が、脈々と受け継がれ、50年後の観客にも拍手喝采を浴びていることに観劇した。そして、小学生の私ではなく、50歳代後半になった私が再び、息をのんでステージを見つめ、歓声をあげ、時には笑い転げ、あっという間の2時間を過ごしたのである。
 それでも、私の目に新鮮だったのは、3つの回転軸に二人の男が挑む空中大車輪。そして、8頭ものホワイトライオンを操る猛獣ショー。ホワイトライオンは、稀少種ながら南アフリカに野生の群れとして存在しており、氷河期にいた白い保護色のライオンの遺伝子を受け継いでいるという説がある。これらの演技以外にも、象のショーやジャグリング、イリュージョンなど、多くの外国人団員によってサーカス団は構成されており、国際色豊かなサーカスに発展していた。

 私は、常々、古典的な演劇が好きで、大衆演劇やいかがわしい見世物小屋、大道芸などもわくわくする。別の項でも書いたが、これは母方の血筋だろう。そして、今、自身もエンヤトット一座というバンドで演じて見せている。今一度、一枚目、二枚目、三枚目の立ち位置をメンバー間で確認しなければならない。(笑)

by くりんと