NHKの朝ドラにはまっている。いつ以来だろうか。これまで、『ふたりっ子』、『ほんまもん』、『ちりとてちん』が、私の中の朝ドラだが、2011年の秋に始まった『カーネーション』は、まちがいなく3本の指に入りそうだ。見始めたきっかけは、同郷の女優尾野真千子がヒロインに抜擢されたこと。彼女が出演した映画『萌の朱雀』、『殯の森』、『クライマーズ・ハイ』などでは、シリアスな女性の役を演じてきたが、朝ドラではどんなキャラを演じることができるのか期待と不安が交錯していた。
しかし、その不安の方は杞憂であった。岸和田に生まれた男には“だんじり”というアイデンティティーがあるが、女は乗れない。やがて、ヒロインは糸子は“ミシンというだんじり”を見つける。昭和初期という時代に、“女だてら”に洋装店を起業する男勝りの馬力を、尾野真千子は見事に演じている。
実は、私が食いついたのは“岸和田弁”。ドラマのヒロイン小原糸子は、ファッションデザイナーのコシノ3姉妹を育てた母・小篠綾子がモデルとなっているが、その次女のコシノジュンコは、朝日新聞の“仕事力−コンプレックスの効能−(2011/10/30付)”でこう述べている。「18歳で上京して文化服装学院に入学した時から、強い方言のために笑われ、恥ずかしく、私は人と交流することを避けて口を閉ざしました。そして半年間ひたすら黙々と絵を描いた。19歳の若さで異例の装苑賞を受賞出来たのは、その悔しさのおかげでしょう(笑)。」彼女にとって、かつてコンプレックスであった岸和田弁が、このドラマでは血液となってテンポよくストーリーを運んでいる。また、糸子の男子同級生(ボケ役)に対して発する「コラッ、ボケェ〜」のツッコミは抜群で、いたるとこ
ろに“漫才”が見られる。
今回、このドラマの岸和田弁から、2つの発見をした。1つは、私や父が使っている五條弁のルーツに金剛山を越えた泉州
(岸和田などの和泉地域)があること。2つめは、私の母が使っていた和歌山弁も和泉山脈を越えた泉州に由来していること。五條は泉州の東、和歌山は泉州の南ということで、それぞれの方言はずいぶん異なるが、ドラマ中の岸和田弁は私のDNAをガンガンくすぐってくる。ヒロイン演ずる尾野真千子も五條市西吉野町出身とあっては、岸和田弁に無理がない。おばあちゃんを演ずる正司照枝は、演じているのか地のままなのかわからない。(笑)
私がもう一つ食いついたのは、ヒロインの母・千代を演ずる麻生祐未の役どころ。神戸の富豪松坂家のお嬢様育ちだが“超天然”。大阪の笑いとは異なったテンションで、ドラマを和ませてくれる。実は、NHKのサラリーマンNEO「君子、46歳のメモ」シリーズでも、麻生はキャリアウーマンの天然ぶりを抜群に演じている。民放のドラマ『JIN−仁−』では、綾瀬はるか演じる橘咲の母親役をシリアスに演じていたが、NHKでは彼女の新境地を覗かせている。
『カーネーション』、今から見ても遅くないですよ。 |