るのに、ウクレレ一本での弾き語りとは、実に古くて新しい。
オヤジ化しつつある私には、「ウクレレの弾き語り=牧伸治の歌謡漫談」のイメージがこびりついて、逃れられない。
「ギターを弾きたかったが、手が小さかったためウクレレを始めた」と聞くが、彼女にとっては何のためらいもなく、自然な流れだったのだろう。
私の手は十分大きいが、もし、もみじのような手だったとしても、牧伸治の範疇を乗り越えることはできなかっただろう。
2枚目の鱗は、70年代後半生まれの女性による、まさかの『プカプカ』のカヴァー。
私と同世代(60年代生まれ)であっても、どれだけ西岡恭蔵を知っているだろう。
ちなみに彼女は、吉田拓郎の『結婚しよう』、井上順二の『お世話になりました』、ロスインディオス&シルビアの『別れても好きな人』、大滝詠一の『君は天然色』、シュガー・ベイブの『パレード』など、オヤジ心をくすぐるような往年の
ヒット曲もカヴァーしている。
フォーク、演歌、ロックとジャンルにとらわれず、あくまでもつじあやの目線。
いずれもほんわかした、つじあやの的アレンジで消化され、癒しを与えてくれる。
3枚目の鱗は、『COVER
GIRL』というアルバムのコンセプト。
2枚組計14曲が収録されているが、Disk1は 「tokyo side」でスタジオレコーディング。
そして、Disk2が 「kyoto side」で、彼女の地元京都ゆかりの地でのレコーディング。
特にDisk2の曲は、鴨川の川縁や出身校の体育館などで録音され、おもいっきりウクレレ一本勝負。
中でも、実家の自室で使いこんだラジカセに一発録りした「Swallowtail Butterfly -あいのうた-」などは、彼女の発想と度胸に唖然としてしまう。
4枚目の鱗は、熱唱しないふんわかした癒し系ヴォーカル。
鼻歌がCDにのっかてるというのは、言い過ぎだろうか。
か細い声を、もがきふりしぼっていた私にとって、「歌唱力ってなんだろう」と、新たな道標と課題を提起してくれた。
「俺って、なんと自己規制の強い男なんだ。」
つじあやのに、うちのめされた今年の春です。
by くりんと
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