サントリー「モルツ」のCMで、松たか子と陣内孝則が出演している“新幹線編”の、バックに流れている音楽がイカしていて、「忌野清志郎っぽいなあ」と気になっていた。
あれこれ調べてみると、清志郎率いる覆面バンド、ザ・タイマーズが89年に出したアルバム『ザ・タイマーズ』に収録されている、「デイ・ドリーム・ビリーバー」であることがわかった。
モンキーズのヒット曲を、日本語の歌詞でカヴァーしたものらしい。
さっそくCDを購入して、「デイ・ドリーム・ビリーバー」を聴いたが、シンプルな歌詞がいくつかのイメージをかきたて、サビのリフレインに気持ちよくのせられてしまう。
この1曲で、このアルバムに出会えてよかったなあと思ったが、他の収録曲もなかなかのもの。
「デイ・ドリーム・ビリーバー」は、CMのイメージ通り、一服の清涼感をもたらす曲だが、このアルバムにおいては、むしろ異色といっていい。
話は長くなるが、このアルバムの経緯を少々。
1986年、ソ連のチェルノブイリで原発事故が起こり、直後、RCサクセションは反原発的日本語歌詞を付けて「Love Me Tender」をカヴァーする。
その曲が収録された『COVERS』というアルバムの発売にあたり、当時、東芝EMIの親会社である東芝の圧力がかかったのか、発売中止となる。
(どうも、電力会社との関係を重視してのことらしい。)
こうした経緯のなかで結成された清志郎率いる覆面バンド、ザ・タイマーズ。
このバンドのアルバム『ザ・タイマーズ』に収録された曲は、右の通り。
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1. タイマーズのテーマ
2. 偽善者
3. 偉人のうた
4. ロックン仁義
5. デイ・ドリーム・ビリーバー
‐DAY DREAM BELIEVER‐
6. 土木作業員ブルース
7. 争いの河
8. カプリオーレ
9. LONG TIME AGO
10. 3部作(人類の深刻な問題、
ブーム ブーム、ビンジョー)
11. ギーンギーン
12. 総理大臣
13. LONELY JAPANESE MAN
14. 税
15. イモ
16. タイマーズのテーマ
(エンディング)
17. Walk don’t run
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「LONG TIME AGO」は反原発、「偉人の歌」「ロックン仁義」は先の発売中止、「偽善者」はFM東京による放送禁止を皮肉ったもの。
「総理大臣」は、当時、愛人問題のため僅か68日で退陣した宇野宗佑総理と、また、「カプリオーレ」は、1989年2月24日の昭和天皇の葬儀「大喪の礼」とリンクさせることもできる。
清涼剤を求めて買ったところが、何といういわくつきのアルバムに出会ったものだ!
記憶に新しいところでは、1999年のパンク版「君が代」が収録されたCD『冬の十字架』発売にあたっても、似たような騒動があった。
ちなみに、RCサクセションの『COVERS』は別レーベルで発売されたが、現在は入手困難。
これらのアルバムは、忌野清志郎を語るにはずせない、3枚のアルバムとなりそうだ。
<追伸>
ザ・タイマーズは、当時、フジテレビ系の「夜のヒットスタジオ」に出演している。
そして、なんと、FM東京をののしった確信犯的アドリブ歌詞で「偽善者」を歌い、そのままオンエアーされている。
司会古館伊知郎のあわてた顔。
このときの映像が、ネット上に流れているとか?
by くりんと |