Guitar Case 47

Guitar Case > 2003

「できる」と「みせる」はちがうということ

 

年末、久しぶりに「舞太鼓あすか組」の和太鼓コンサートに行ってきた。
彼らの和太鼓には、数年前からとりつかれ、何週間も前からわくわくしていた。
この日のステージは、まず、飛鳥大五郎氏指導による主催地の方々による和太鼓演奏が、前座として披露された。
そして、いよいよあすか組。
「爆竹」という曲で、幕開けだ。
申し訳ないが、(当たり前だが、)前座の方々と、この演奏の違いはなんだろう。
息と間? リズム? 1打1打の気合? 若々しき肉体美? 立ち姿の美しさ?
1曲目から、衝撃と感動を受ける。
1曲目だけで、入場料分の満足を得る。
私のお気に入りは、「鬼と天狗」という曲名の舞太鼓。
軽快な和太鼓のリズムに合わせ、能・狂言のエッセンスを取り入れた寸劇が舞われ、あすか組の真骨頂が垣間見られる。
また、最後に演じられる「波動」では、桶胴太鼓を担いでの即興が見られ、メンバーそれぞれの個性が垣間見られる楽しさが味わえた。

さて、昨今、和太鼓ブームで、各地に村おこし的な和太鼓グループが生まれている。
そうした和太鼓には、その土地の何かしらのイベントの折に、演奏されているのによく出くわす。
多くの場合、その演奏者たちは、練習したとおりに、最後まで間違いのないように、こわばった顔つきで演奏に徹し、
また、見ている方は、見知らぬ土地の(イベントの)お客として、失礼のないように、咳払い一つ遠慮がちに、静かに演奏を見守る。
演奏の終了と共に、両者は、それぞれの緊張から開放される。
村おこし的和太鼓を批判するつもりはなく、もし、身近にあれば、私も参加してみたいと思っている一人だが、ただ、観客側にまわった場合、先のような理由で、和太鼓をあまりかっこいいとは思ってこなかった。

話は飛ぶが、元体操選手の池谷幸雄さんが、あるTV番組で、「『できる』ということと『みせる』ということは違うんですよ」と言いながら、側転の指導をやっていた。
彼の登りつめた体操の世界は、難度の高い技を競って会得する努力もさることながら、まさに、見せて評価されるスポーツである。
これは、和太鼓の世界でもまったく同じことが言える。
私が、村おこし的な和太鼓グループの一部の演奏に、かっこよさや感動を覚えないのは、この違いかもしれない。
そして、あすか組は、「みせる」ことを前提としたレベルで、日々練習を積み重ねているプロの集団であるということ。
演劇であれ、ダンスであれ、ピアノであれ、ロックであれ、舞台に立つ、人前に立つということの基本。
「できる」と「みせる」はちがうのである。

2004年、私も、肝に銘じ精進いたします。

by くりんと   

Guitar Case 46

Guitar Case > 2003

LET IT BE... NAKED

1969年ごろ、ビートルズは、ポールの提案で、『Get Back』というスタジオ・ライブ・レコーディングしたアルバムを作り、同時にこの模様をフィルムに収めようとしていた。
ところが、崩壊寸前のビートルズに、メンバー間の確執もたびたび生じ、計画はいきづまって、録音状態のよくない膨大なテープの山だけが残った。
そこへ、名プロデューサー、フィル・スペクターの登場。
彼は、モノラル・レコード時代に、画期的なエコー・サウンドを駆使した広がりのあるサウンドづくりで有名であった。
そのフィル・スペクターの地道な努力によって、膨大なテープの山から、何とか聞くに堪えうるアルバム
『Let It Be』が完成した。
何かといわく付きのアルバムで、フィル・スペクターも悪役にされがちではあるが、しかし、彼の手によって初めて、私たちの前に、ビートルズ最後のアルバムが届けられたことには違いない。

そして、このたび、そのフィル・スペクターの手によるオーケストラ、コーラスや、サウンド・エフェクトなどをそぎ落とし、ビートルズの演奏の部分だけを残してリミックスされたのが、30年ぶりのニュー・アルバム
『LET IT BE...NAKED』。
ビートルズ・ファンのみならず、だれもが聴いてみたいと思う、とても興味深いアルバムである。
その一方で、あらためて厄介者の烙印を押されたフィル・スペクターが忍びない。



<曲目リスト>
1.Get Back
2.Dig A Pony
3.For You Blue
4.The Long And Winding Road
5.Two Of Us
6.I've Got A Feeling
7.One After 909
8.Don't Let Me Down
9.I Me Mine
10.Across The Universe
11.Let It Be

このCDに収録されたのは11曲。
まず、全体的に、フィル・スペクターのエコー・サウンドがきれいにふきとられ、ヴォーカルやコーラス、各楽器がクリアとなり、まさに、アルバム・タイトルどおり“Naked”。
武道館で見るビートルズのライブから、ライブハウスで聴くビートルズといった相違だろうか。

次の3曲のアレンジが、そもそも、フィル・スペクター色が濃いかったゆえ、特に耳に新鮮である。
♪ The Long And Winding Road
♪ Across The Universe
♪ Let t Be

一方、映画『LET IT BE』の屋上で演奏されたような次の曲は、さほど違いはないように思える。
♪ Get Back
♪ I 've Got A Feeling
♪ One After 909

あと、私自身、このニュー・アルバムによって、あらためて好きになった曲がある。
♪ Dig A Pony (前奏のフレーズで、ジョンとジョージのギター、ポールのベースが、とてもファンキーに、そしてすごい迫力でせまってくる。)
♪ For You Blue (リンゴのハイハットとジョージのマンドリン?がこんなにイキだったっけ。)

このアルバムの出現によって、ビートルズの「演奏」がより明らか聴くことができる。
しかし、もし当時、フィル・スペクターの手が入らなかったとして、このニュー・アルバムのようなアレンジで発表されたかというと、決してそうではないだろう。
この時期の彼らのアルバムづくりのスタイルとしては、(プロデューサー及び彼ら4人による)アレンジの創造こそ、大きな意味を持っている。
となれば、次なる贅沢な望みとして、ジョージ・マーティンがプロデュースをしていたとしらどうなったのだろう、と興味は尽きないのである。

(※ ジョージ・マーティン → それまでのビートルズのオリジナル・アルバムのプロデュースをすべて手がけた、5人目のビートルズ。)

by くりんと   

Guitar Case 44

Guitar Case > 2003

「歌垣」というアジアの恋歌

前回に紹介した奈良県立万葉文化館で、「歌垣(うたがき)というアジアの(日本の)文化に出会った。
「歌垣」とは、村の若者が神のすむ山に集まり、人垣をつくって即興の歌を男女間で掛け合い、求愛するという風習である。
日本では、『万葉集』や『風土記』から、その時代に「歌垣」のあったことを知ることができ、摂津(大阪府能勢町)の歌垣山、常陸(茨城県つくば市)の筑波山、肥前(佐賀県白石町)の杵島山は、日本三大歌垣と称されている。
また、先の万葉文化館では、以下の日本の伝統芸能が、歌垣の名残を今にとどめていると紹介している。


万葉文化館「万葉の広場


平瀬まんかい(鹿児島県大島郡龍郷町)
夕刻、海岸にある2つの大岩に、神役の男女が数人のぼり、向かい合って、招くような手振りをしながら交互に歌を交わす。
とぅばらーま(沖縄県石垣島)
もともとは畑仕事や牛を追う労働歌で、野良から変える男女が即興で歌掛けをしたものだといわれる。
壬生の花田植(広島県山県郡千代田町)
さんばいという進行係の男性が親歌をうたうと、早乙女は小唄を合唱し田植えをする。周囲で男たちが笛太鼓の田楽を奏する。
金沢八幡宮賭け歌行事(秋田県横手市)
ステージの二人が、郷土民謡『仙北荷方節』のメロディーにのせて即興の歌詞を応酬し競う。

ちなみに、沖縄石垣島では、その歌唱と創作詞を競う「とぅばらーま大会」というのまで開催されている。
また、今に伝わるわらべ歌「はないちもんめ」も、歌垣の形態をほのかに残しているとも言える。
さらに、中国南部一帯に見られる歌垣は、こう紹介している。

白族(ペー族)剣川(チェンチュワン)の歌垣(中国雲南省)
石宝山(シーパオシャン)に、結婚相手を求める原始的な歌垣が残っている。
男女が数時間にわたって情熱的な即興の歌垣を交わす実例が報告されている。
苗族(ミャオ族)(中国貴州省)
マンドン村の丘の上での歌の掛け合いは集団合唱によるもので、民俗芸能化している可能性が大きい。
トン族の玩山歌(ワンシャンガ)(中国貴州省)
最初はなぞなぞ問答のような歌の掛け合いで、相手の人格や学識などを判断し、意中の人が決まると誓いの歌となる。

万葉文化館では、主にビデオ映像で、これらを紹介してくれている。
そのビデオ映像(中国編)から、木製の三味線(三線?)を伴奏楽器に使っている「歌垣」も知ることができた。
これは、まさしく、九州の方に伝わる木製の弦楽器「ゴッタン」とそっくりではないか。
東南アジアや中国南部に端を発した「歌垣」が、稲作文化と共に、はるか弥生の時代、琉球・九州に伝わり、万葉の時代には、藤原京や平城京でそういうことが行われていた、と想像するのはどうだろう。
「はないちもんめ」も、奥が深い。

by くりんと   

Guitar Case 43

Guitar Case > 2003

奈良県立万葉文化館がおもしろい

平成13年9月にオープンした奈良県立万葉文化館(高市郡明日香村)。
こちらは、建設に先立って発掘調査が行われた結果、予定地から富本銭の鋳造炉跡群が見つかり、建設を続行すべきかどうかの一騒動もあった。
そういう理由だけではないが、「万葉文化館」というネーミングも、館内展示をイメージするに足りず、近くを通っても敷居が高かった。
いや、実際は一度訪れたが、駐車料金500円におののき、Uターンしてしまった。
さて、このたびは、こちらの野外ステージを利用した「万葉のひろば」というイベントにエンヤトット一座の出演が決まり、秋深まる


万葉文化館野外ステージ

明日香の舞台でひと時を楽しんだ。

出演後は、いよいよ本館を見学することに。
この夏、万葉集に興味を持って以来、実は、けっこう楽しみにしていた。
この資料館は、『万葉集』をひろくふかく紹介する文学的な施設だろうと推測していたのだが、1階は案の定、万葉集に詠まれた和歌をもとに描かれた日本画の展示室。
ところが、地下1階へ降りると、「歌とはなんだろう」「歌の広場」「万葉劇場」「万葉おもしろ体験」「さやけしルーム」といった万葉の時代を体感できる展示空間となっている。
これはおもしろそうと直感!

【歌とはなんだろう】
 私たちの日常生活に見られる様々な「うた」の形をとりあげ、原初の万葉歌に遡って考えていくためのきっかけとします。解説パネルで万葉歌との関連性を紹介します。
 映像と鏡の万華鏡トンネル空間で、「声によるうた」や「文字によるうた」を放映します。

【万葉の広場】
 海石榴市をはじめ東市、西市、軽市などをイメージした古代の市空間を再現しています。個々の小屋に展示ユニットを配し、「声」で歌われた古代の歌から「文字」で表現された歌、アジアの歌など、万葉歌を中心とした様々な歌に出会えます。
 歌に興じる男女、市の人々などのシーンや、歌垣に始まり、万葉時代までの掛け歌の系譜を映像で紹介したり、パソコンを使ったクイズ形式のゲームがあったりと古代空間を体感できます。
 歌を通して男女が誘い合う歌垣の様子を常陸国風土記や日本書紀に載せられた物語を例にファンタジックな紙芝居風アニメーションで紹介します。

【万葉劇場】
 万葉歌人の歌をもとに、それぞれの歌人の個性や心情、人間関係や時代背景などをとりあげ、人形、映像、アニメーションなどの複合的な手法で紹介する劇場空間です。
 能や雅楽をはじめとした日本の伝統芸能のエッセンスを抽出し、新しい創作歌劇として現代に生まれ変わらせます。
人形と映像による歌劇「額田王」と「柿本人麻呂」、アニメーション「万葉のふるさと」の3本立てです。

 (『奈良県立万葉文化館ホームページ』より抜粋)

上記の説明にも見られるように、決して『万葉集』にとらわれず、古代の「うた」の成り立ちをたどっていく企画がおもしろい。
西洋音楽一辺倒の日本音楽シーンの中で、昨今は、和太鼓グループなどが海外公演に出かけては、日本のアイデンティティーをアピールしている。
しかし、日本の、万葉の時代の、古代音楽にも、私たちのアイデンティティーを垣間見れることが、ここ万葉文化館では体感できることでしょう。

by くりんと   

Guitar Case 42

Guitar Case > 2003

六甲おろしに颯爽と

18年ぶりの阪神タイガースの優勝にわく関西。
私も、『六甲おろし』を愛唱歌としてきたタイガースファン。
ただ、今回の優勝には、じたばたとしない。
何せ、18年前の優勝を、ファンとして、すでに経験済みなのだから。

さて、昭和11年に生まれた『六甲おろし』、歌詞は文語調で、子どもにはわかりにくい言葉も多いが、それがかえって曲の覇気を高め、応援歌にふさわしい調子を整えている。
前奏を耳しただけで血が騒ぎ立つのだから、編曲もすばらしい。
とまあ、月並みな評論はこれぐらいにして、このたびは、ファンの一人として、阪神タイガース優勝につき、一言ご祝辞を!

阪神ファンは1000万人、巨人ファンは3000万人と、某新聞で目にしたが、「その阪神ファン=(イコール)=道頓堀川に飛び込む熱狂ファン」と、とられかねないような各マスコミの報道には、いつものことながら苦笑してしまう。
なんでも今回は5300人が飛び込んだらしいが、それは「18年ぶりの阪神優勝」というお祭りに乗じて、集まった人たちの突飛な行動である。

六甲おろし  
作詞/佐藤惣之助 作曲/古関裕而

1.六甲おろしに颯爽と
  蒼天翔ける日輪の
  青春の覇気麗しく
  輝く我が名ぞ阪神タイガース
  オウオウ オウオウ 阪神タイガース
  フレ フレフレフレ
 
2.闘志溌剌起つや今
  熱血既に敵を衝く
  獣王の意気高らかに
  無敵の我等ぞ阪神タイガース
  オウオウ オウオウ 阪神タイガース
  フレ フレフレフレ
 
3.剛腕強打幾千たび
  鍛えてここに甲子園
  勝利に燃ゆる栄冠は
  輝く我等ぞ阪神タイガース
  オウオウ オウオウ 阪神タイガース
  フレ フレフレフレ

 

巨人ファンでも、阪神の優勝セールには心踊る人が多いように、飛び込んだ者こそ阪神ファンというわけではないだろう。
私が小学生の頃は、野球帽といえばジャイアンツのYGマークの貼り付けたものしか売られていなくて、それを剥ぎ取り、母親にTのマークを(THマークなどもちろん商品化されていない)縫い付けてもらった。
そうした世代は、阪神ファン=アンチ巨人が多い。
阪神が18年間優勝しなくても、巨人が負けることで、そのモチベーションを維持してきた。
甲子園に連日かけつけ、体いっぱいの応援をするのもファン。
阪神グッズを身につけ、体いっぱいの表現をしているのもファン。
しかし、私の場合、今年は、タイガース戦のTV中継も多く、連戦連勝ゆえ美味しいビールをいただいた日の多かったことに、何より満足している。
全国1000万人?のタイガースファンを一くくりに報道するマスコミの方々、『六甲おろし』は、1000万人のファンが、それぞれの思いで、それぞれのスタイルで、颯爽と歌っております。

by くりんと   

Guitar Case 41

Guitar Case > 2003

SMAP♪世界に1つだけの花

SMAPが歌う「世界に1つだけの花」が、すでにCDの販売枚数200万枚を超えた。
彼らが、彼らなりのプロセスをもって歌えば決まるし、それなりに売れるのは当然だろう。
ただ1点、歌詞を聴いて少々苦笑い。

『日本国憲法』の保障する「基本的人権の尊重」というものを、この詞のような例えで、これまで何千人、何万人、何十万の人が、訴えてきただろうか。
相田みつをの書の中で、牧口一二の「ちがうことバンザイ」で、いつぞやの外国人による日本語弁論大会の中で、「チューリップの歌」の歌詞で...。
どう考えても、右の詞は、マッキーの“only one”とは思えない。
少なくとも、私には、新鮮ではなく、むしろ古典的である。

が、これをSMAPが歌うと、演じると、もはやスタンダード。
またたく間に、200万人の人の心を、そして、お金を動かす。
すごいねえ、彼らの力。
彼らのことを、“NO1”と言うんだろう。

なら、私は私の種を、一生懸命育て、花咲かせることにエネルギーを注ごう。
と、悟りました。
 

世界に1つだけの花    歌:SMAP  作詞・作曲:槙原敬之
NO1にならなくてもいい
もともと特別なonly one
花屋の店先に並んだ
いろんな花を見ていた
人それぞれ好みはあるけど
どれもみんなきれいだね
この中で誰が一番だなんて
争そうこともしないで
バケツの中 誇らしげに
しゃんと胸を張っている
 
それなのに僕ら人間は
どうしてこうも比べたがる?
一人一人違うのにその中で
一番になりたがる?
 
そうさ僕らは
世界に一つだけの花
一人一人違う種を持つ
その花を咲かせることだけに
一生懸命になればいい
 
 
困ったように笑いながら
ずっと迷っている人がいる
頑張って咲いた花はどれも
きれいだから仕方ないね
やっと店から出てきた
その人が抱えていた
色とりどりの花束と
嬉しそうな横顔
名前も知らなかったけれど
あの日僕に笑顔をくれた
誰も気づかないような場所で
咲いていた花のように
 
そうさ僕らも
世界に一つだけの花
一人一人違う種を持つ
その花を咲かせることだけに
一生懸命になればいい
 
小さい花や大きい花
一つとして同じものはないから
NO1にはならなくてもいい
もともと特別なonly one


by くりんと          

Guitar Case 40

Guitar Case > 2003

一座の愉快なライブ

「ああ、愉快だった。」
先日の、鳥取のアイワナドゥ岩戸で行ったライブに来られていた、70歳過ぎのご婦人が、そう言い残して帰られたそうである。
このご婦人は、昨年も来てくださっていたようで、近くで書道教室をひらかれている方とか。
私の場合、生まれてこの方、「愉快」という日本語を、実践で使ったことがない。
関西人だから?それとも、育ちのせい?
いずれにしても、「不愉快」という言葉は使えど、「愉快」の使いどころを心得ていなかったように思う。
その「愉快」という言葉が、凛とした初老のご婦人から、エンヤトット一座のライブに向けていただいたというのは、なんだか光栄、非常にうれしいのです。

さて、この岩戸での夏休みライブも、かれこれ5年目をかぞえ、今年も、この1年間に蓄えたエネルギーを惜しみなく展開した。
5年目ともなると、ライブに足を運んでくださる方々の息づかいも、徐々に整いつつあり、私たちにとっても、最も大切にしているライブの1つとなっている。
こちらのお店のもつ空間や席数は、私たち6人の持ちうるエネルギーで満たすことのできる、ほどよい大きさなのかもしれない
これまで、大きなホールやステージでのライブも経験してきたが、舞台の広さや客席数によっては、もはや私たち6人だけの手には負えず、チケット販売に始まって、照明や音響、舞台監督といった組織だったスタッフの力添えなしでは、成り立たないと悟っている。
それに対して、自分たち6人だけでも創ることのできうるステージ、それがこちらアイワナドゥ岩戸での空間である。

不案内な土地でのライブ、もちろん、主催してくださっているお店のオーナーの方の、ライブ直前までのあたたかい演出なしでは成り立たず、とても感謝している。
「1年に1度、七夕のように、再会を心待ちにしています」という、ありがたいメールもいただいた。
「愉快なライブ」
今年は、花束と共に、いいテーマをお土産に、大和に持ち帰った。

by くりんと   

Guitar Case 38

Guitar Case > 2003

エンヤトット一座 『六根清浄』を解く

2003年5月25日、エンヤトット一座は、 New CD 『六根清浄』を発表いたしました。
結成13年のベスト・アルバムという性格が強いのですが、今一度、収録全9曲をご紹介します。

1.40歳のレゲエ (詞・曲: くりんと)
「30歳のばらっど」はフォーク調に仕上がったので、このたびはレゲエのノリでと、ボブ・マーリを聴きまくって作ったのがこの曲。
結局、わが一座の血液には、未だレゲエのリズムは脈打たず、さわやかな仕上がりなってしまった。
レゲエというネーミングに心苦しいところもあるが、いつしか、肩の力を抜き、楽しく音楽をやれたらいいなあと期しております。

2.寅さんのロックン・ロール (詞・曲: くりんと)
一座の曲には、ネタものとメッセージものがあります。
で、この曲は、くすっとほくそえんでいただく代表的なネタものですが、ところどころに日本人の心というメッセージもこめております。
ただ、台詞は難しかった。
加山雄三のような棒読みならまだしも、マジにかましてオチをねらうなどは、渥美清さんならではの芸だと悟る。
どうです、チャンチキとロックン・ロール、妙に合うでしょう?

3.20世紀ららばい (詞・曲:くりんと)
3年前に録音したきりで、しばらく忘れ去られていた、お蔵入り寸前の音源。
しかし、ヴォーカルの録音状態が結構気に入って、もう一度化粧直しをした。
20世紀は、人類史上稀有な100年。
まだ、十分、デフラグできていないでしょう。

4.六根清浄 (詞:エンヤトット一座/曲:くりんと)
奈良の地図の真ん中に、山上ヶ岳という山がある。
修験道の道場として、未だ女人禁制を布くこの山は、地元では「さんじょうさん」と称され、「男として生まれたなら、一度は登っておけ」と言われている。
「懺悔懺悔六根清浄(ざ〜んげざんげ〜 ろっ〜こん しょうじょう)」の呪文と唱えながら、修験者たちは隊列を組んで登る。
わが一座の男ども、それぞれが作詞したパートでヴォーカルをとった。
4人の懺悔、とくと、聴いてやってください。
ちなみに、甲高い鉦の音はチャッパ。

5.IWADO (詞・曲:くりんと)
鳥取砂丘に近い岩戸の漁港に、「アイワナドゥ岩戸」というタイ国風料理のレストランがある。
鳥取では、知る人ぞ知る人気スポットだが、まず、料理がおいしい。
レストラン内は、檜・杉をふんだんに使った造りで、フィットンチッドが漂い癒される。
ママさんは素敵な美人。
そして、日本海に沈む夕陽がすばらしい絶景。
そこで、この歌が生まれました。
ヴォーカルは葉月。

6.蔵王権現 (詞・曲:くりんと)
吉野山金峰山寺のご本尊は「蔵王権現」。
蔵王権現とは、山岳宗教に由来するもので、平たく言えば「山ノ神」となる。
この人の前では、嘘はつけない。
ここに立てば、素直になれる。
この人がいるから、私がいられる。
人それぞれに、形・場所を変えて、「蔵王権現」が現れます。
団扇太鼓の打音とともに、しばし瞑想を。

7.大和五條の空の下 (詞・曲:くりんと)
幕末が好きだ。
坂本竜馬、吉田松陰、勝海舟...。
20代の頃は、彼らを必死に追いかけた。
しかし、わがふるさとを舞台に駆けぬけた、名もなき尊皇の志士たちがいる。
天誅組の義挙。
わが生涯のテーマです。

8.エンヤノヤ (詞・曲:くりんと)
いろんな応援歌があるけど、我ら農耕民族の末裔として、ここは叫んでみようと思った。
雨と太陽は、だれにも分け隔てがない。
そんな生き方ができたらなあ。
朝鮮の打楽器ケンガリで雨を呼び、太鼓で太陽を迎えます。

9.悟りが舞いおちる (詞・曲:くりんと)
この曲をやり終えたあと、「メンバーのどなたか、お寺の方ですか?」と時々聞かれる。
そう言えば、「六根清浄」だの、「蔵王権現」だの、一見仏教色の匂う曲が多いなあと、しばし腕組み。
ちなみに、お寺関係は、だれもいませぬ。
また、どの宗派にもこだわりません。
ただ、釈迦という人物に、興味を抱きました。

by くりんと