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奈良公園の鹿とどんぐり

クヌギのどんぐりに集まる若草山のシカ

 奈良公園の鹿は、鹿せんべいで生きのびているわけではない。主食は奈良公園のノシバである。奈良の鹿愛護会によると、奈良公園の鹿は1360頭(2018年7月16日現在)で、1日に食べる草は約5キログラム。公園内は鹿の過当競争が激しく、春日山原生林の植生をおびやかしたり、周辺の農作物への食害など課題も多い。ちなみに、鹿せんべいは米ぬかと小麦から作られており、1枚3〜4gとおやつにすぎない。
 鹿の食性全体のなかで、ノシバは約36%、他に生葉や枯葉、ササなどで賄うが、実は、秋には、ドングリも大事な食料源となっていることは、以外に知られていない。私自身、奈良公園内四季亭付近で、シラカシがアスファルト路上にポトンポトンとドングリを落とし、それを鹿が待ちわびながら1つ1つ漁っている場面に出くわしたことがある。別の場所で、試しにクヌギのドングリを与えると、角氷を奥歯で砕くようにカリコリ音を立てながら美味しそうに平らげた。この季節は、鹿せんべいを買わなくとも、奈良公園内のドングリを拾ってくれば十分餌付けを楽しめる。実際、奈良の冬の風物詩としてホルンの音色で鹿寄せが行われているが、この時も、ドングリがまかれている。

 奈良の鹿愛護会では、病気やケガのため自力でエサを確保できない鹿や、妊娠などで気性が荒くなっている鹿を、「鹿苑」という場所で保護している。ここの鹿たちは、個人や様々な団体からの寄付金で植物性のエサを賄われているが、実は、ドングリの寄付も募っている。奈良の鹿愛護会の事務所(鹿苑横)に、直接もって行くか、郵送・宅配(発送者送料負担)でも受け付けている。
 事務所前のゲートから鹿苑の放牧場に入ると、奈良公園の鹿の生態などを解説したパネル展示があり、さらに奥へ進むとコロコロレールからフェンス越しに鹿にドングリを与えることもできる。動物園のバックヤードのような雰囲気で、のんびりと静養している鹿との触れあいも一興である。

【送付先】
〒630-8212 奈良市春日野町160 一般財団法人 奈良の鹿愛護会
電話:0742-22-2388

 
鹿苑   鹿苑でもカップ1杯のどんぐりをあげることができる
 
コロコロレールに集まる鹿苑のシカ   どんぐりを寄付するとこんなシールをもらえた