ブナ科のハナガガシは、その名の通り細長い葉が特徴で、堅果は樽型、表面には縦じわが見られる。環境省レッドリストの絶滅危惧U類に指定され、四国(高知・愛媛県)、九州(大分・熊本・宮崎・鹿児島県)にのみ自生している。宝蔵院流槍術では、稽古槍(鎌槍:2.7m・素槍:3.6m)にカシ材のものを用いてきたそうだが、無節・長尺の材がとれるハナガガシも適材と言われている。以下、天然記念物に指定されている自生地は以下の通りである。
<国指定天然記念物>
堅田郷八幡社のハナガガシ林(大分県佐伯市大字長谷5堅田八幡宮境内)
<県指定天然記念物>
八坂神社のハナガガシ林(大分県佐伯市江良 八坂神社境内)
<市指定天然記念物>
松尾八幡宮のハナガガシ自生林(高知県土佐市甲原 松尾八幡宮境内)
福瀬神社のハナガガシ(宮崎県日向市東郷町山陰 福瀬神社境内)
2021年7月、高知県を訪れる機会に、ハナガガシの自生地に足を伸ばそうと調べてみる。先述の土佐市の松尾八幡宮以外に、天然記念物等には指定されていないものの、高知県内には以下の自生地が知られている。
○高知市の朝倉神社
○土佐市北地の闇谷神社
○四万十町広瀬の河内・八坂神社
○須崎市上分甲(熊野神社と横川公園の間の標高約140〜400mの区域)
ほとんどが神社の社叢林として守られてきた、あるいは伐採を免れてきたようで、今や、高知県内では、パッチ状にかろうじてその自生の断片が垣間見られるようだ。ただ、2018年5月26日付の高知新聞によると、須崎市で発見された自生地は山中で、他の社叢林のものとは生き残ってきた経緯が異なり興味深い。 |