どんぐりや葉はミズナラそっくりだが、愛知県や岐阜県の低地に分布しているこの種は、そのどんぐりの形状から、最近まで中国東北部やロシア沿海州地域に分布するモンゴリナラと同種とされていた。しかし、遺伝子が異なることが判明し、正式には未考証状態の種類であるため、現在は
通称として「フモトミズナラ」と呼ばれている。(モリコロパークでも「フモトミズナラ」の樹木札がかかっていた。)
なんとも宙ぶらりんなこの種は、はたしてブナ科の新種なのか。この“不思議”を地元では、「氷河期に繁栄した冷温帯性のミズナラが、後氷期の温暖化に伴って競争相手の少ない東海地方のやせ地に適応して遺存的に残存し、現在では暖帯域の丘陵地に生育している」と説いている。
しかし、私は以下に掲げる特徴から、そこには“人為”が働いていると考える。
〇すべてをくまなく調査したわけではないが、フモトミズナラの自生地は2次林である。
〇通常ミズナラは巨木に成長するが、私が訪れたモリコロパークではコナラの大木程度に成長したものしか見受けられず、大きくなり過ぎたものは成長障害が目立った。
〇このどんぐりの特徴である先端の凹みに加え、堅果の表面に大きくしわのよったものが目立つのは、発育の悪さからではないだろうか。
以上の後半2点は、いずれもこの地気候に完全に適合していないことから起こる障害と考えられる。その昔、高地性のミズナラを低地の2次林でも植栽し、暖かすぎる気温にも適合し
ながら、害虫の攻撃も強い遺伝子をもった種が何とか生き延びてきたものと考えられないだろうか。
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