イヌブナ (犬椈)
ブナ科ブナ属
葛城山(2005/NOV)
1年成。ブナに比べてその堅果は明らかに小さく、柄が細くてとても長いので容易に識別できる。 しかし、イヌブナの堅果は小さいこともあってか、山中ではなかなか発見できない。 ブナの実ことを「ヤマソバ」という地方もあるらしいが、このイヌブナの実こそソバの実そっくりの形をしている。ブナ同様生食できるが、こちらは小さいのでよほど集めないと胃袋を満たすことはできないだろう。
葛城山(2007/NOV)
落葉高木。葉の裏には白い毛が葉脈に沿って生えており、ブナの側脈が7〜11対前後に対してイヌブナは10〜14対と多く、慣れれば容易に区別できる。 下写真のように、紅葉した葉は落とさず、次の新芽が吹き出すまで残っていることが多い。
高野辻(2010/DEC)
高野辻(2004/OCT)
高野辻(2004/NOV)
ブナより少し標高の低い地域に自生し、奈良県内では葛城山や大塔(五條市大塔町)の山々に多く見られる。ブナやミズナラとも混生するため、その同定には葉や堅果を見る必要がある。 ところが、イヌブナの堅果は、私にとって最も見つけにくいどんぐりの1つとなっている。考えられる理由として、第1は、極めて小さいので、落下後数週間もたてば雨水などに容易に流され、落葉の隙間などに潜り込んで人目に付きにくくなること。次に、ブナ同様受精失敗によるシイナ(空の実)や虫害が多いので、すぐに壊れ腐敗してしまうこと。加えて、豊凶も激しいということがあげられる。豊作の年、堅果落下後1〜2週間以内に、経験値の高いイヌブナの木を訪れることが肝心となる。 イヌマキ、イヌツゲ、イヌシデ、イヌガシと名前の頭に「イヌ」と付く木は多いが、「人間にとって役に立たない」とか「本物に対して偽物・まがいもの」という意味があるようだ。こちらイヌブナは、ブナに対しての「偽ブナ」というところだろうか。 本・四・九