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野鳥一期一会/a>

 
         
         

声はすれど姿は見せずヤブの中のウグイス 

スズメ目ヒタキ科

@♂ A大台ケ原(2011.7.17.)

 その鳴き声は、最も有名な聞きなし「ホーホケキョウ」で知られている。オオルリ、コマドリと共に「日本三鳴鳥」の誉れ高く、春の訪れを告げる鳥として「ホーホケキョウ」が谷間に響けば、人々はおのずと笑顔になる。「春告鳥」という別名もあるが、奈良県の平地部では3月頃から鳴き始め、山地へ行くと7〜8月頃までさえずりが聞こえる。こうなってくると、「春告鳥」としては少し興ざめもするが。
 しかし、その姿は意外に知られていない。かつて、フォークソング歌手がヒット曲を出してもTV出演はかたくなに固辞し、その姿を公にしないことをアイデンティティーとした。歌声だけが有名な、さしずめ野鳥会のフォークシンガーと言えようか。
 時に、梅や桜の木に留まったメジロをウグイスと勘違いし、メジロの鮮やかな若草色の羽色をウグイス色と思い込んでいる人がいるかもしれない。実は、ヤブを好み昆虫を餌とするのがウグイスの習性である。したがって、メジロのように梅や桜の開花を待って蜜を吸いにくることはまずない。ウグイスの鳴き声のする方向を定めたら、むしろ視線は地面に近い茂みを追いかけるといいだろう。ススキが生えササが混じり、ノバラのつるが複雑に絡んで人が避けがちなところが好きなのだ。もちろん高木に留まってさえずることもあるが、その時も鮮やかな若草色の小鳥をイメージしてはいけない。容姿は灰色がかった緑褐色という極めて地味な色で、むしろスズメの方がよほど目立つ装いをしている。
 そういう私も、この目でウグイスの姿をとらえたことは数少ない。ましてや撮影となるとさらに困難が増すが、2011年7月、ようやく大台ケ原の駐車場近くでカメラに収めた。その喜びようは、好きなフォークシンガーに出会ってサインと握手をしてもらったに値するだろうか。その時の撮影で気づいたのだが、ウグイスの口の中はヤマブキ色をしている。ホトトギスがウグイスの巣に托卵をする話はよく知られているが、調べてみるとホトトギスの口の中もヤマブキ色をしていた。大きさも姿形も異なる他人の親に、自分の子供と信じ込ませて給餌させるテクニックに、大きな口を開けた際のあのヤマブキ色が威力を発揮するのだと悟った。

  地味なオリーブ色で雌雄同色だが、雄の方が大きい。
  全国の低地から山地のササのある場所で繁殖する。

 

@♂ A大台ケ原(2011.7.17.)