モズといえば、剣豪宮本武蔵が描いた『枯木鳴鵙図(こぼくめいげきず)』を思い浮かべる。枯木は剣を、モズは武蔵自身を思わせる一幅として、芸術的にも評価が高い。この絵に描かれた体の配色から察するに、おそらく雄の冬羽である。
頭は大きく尾は長めで、強い足を持つモズは、嘴の先が鋭くかぎ形に曲がって太く、猛禽類を忍ばせる。実際、モズは捕らえた獲物を木の枝に突き刺したり木の枝股に挟む行為を行い、「モズのはやにえ」として知られる。こうした習性から何を食べているのか良くわかり、バッタなどの昆虫はもとより、カエルやトカゲ、モグラやネズミ、時にはヘビや小鳥なども捕らえて食べる。
「モズのはやにえ」と共に、「モズの高鳴き」という言葉がある。雄も雌も1羽1羽が縄張りを持って生活するのだが、夏期に山地にいたモズは、秋になると里に下りてくる。去年までの縄張りはリセットされ、新たな縄張り争いが始まる。やがて、電線や見晴らしのよい場所で「キィーキィキィキィ」と高らかに縄張り宣言が行われるが、これを「モズの高鳴き」と呼んでいる。一羽のモズを見つけると、同じ場所で同じモズとよく出くわすことになる。
雄は頭部が褐色で翼は黒くその濃淡がはっきりしている。雌は、翼に白斑がなく、腹は淡褐色で細かい渦上黄斑がある。
九州以北で繁殖する。 |