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野鳥一期一会

 
         
         

日本で最も小さな野鳥のミソサザイ

スズメ目ミソサザイ科

@♂ A大台ヶ原(2018.8.10.)

 紀伊半島では、標高1000m以上の山に登ると、沢筋でひときわ大きな声でさえずる鳥に出くわす。大きな声のわりには、なんて鳴いているのか人間の言葉で表現しにくいが、聞きなしを調べると「一ぴい、二とく、三ぴい、四なん、五ちいち、ぶんぷく、ちくりんちゃん」と紹介されていた。今度、確かめてみよう。
 プロの歌手にも、小さな体にもかかわらず声量があり、しかもとびきり歌のうまい方がおられる。ミソサザイはまさにそうした歌い手だと思う。日本の野鳥の中でも、最小種の一羽にまちがいなく、小さな体を少しでも大きく見せようとするのか、それともそうした方が歌いやすいのか、よく尾羽を上に立てた姿勢をとってさえずるのも特徴である。
 切り株や岩の上など、さえずりスポットは意外に低く近い。ただ、陽光のよく当たる場所ではあまり見かけず、まとった衣装は日陰に同化し、目を凝らさないと見つけられない。したがって、数百ミリのズームでシャッターを切っても、かなり高い確率で手ぶれを起こしているというのがいつものパターンである。
 金剛山で、二度巣のありかを見つけた。一つ目は、高畑道を下っていると登山道沿いの法面で、コケがオーバーハングしたその裏っかわに、一羽が消えていった。それだけではたして営巣地なのかどうか、ただ巣作りのためのコケを集めているだけだったかもしれない。二度目は、山頂にある転法輪寺の軒裏、垂木と垂木の間にぎっしりとコケが詰め込まれ一カ所穴が空いていた。しばらく観察していると、餌を加えたミソサザイが何度か往復するのを確認することができた。比較的レアな場所かもしれないが、野鳥の営巣地に意外性はつきものである。

  日本では最も小さな鳥の1つ。体に似合わない大きな声で、複雑かつ長いさえずりを発する。
 種子島以北の山地