『ぼくの鳥の巣コレクション』(鈴木まもる・著/岩崎書店)という本を手に入れて、これを見ながら、私も鳥の巣を集めたいなと思ってきた。
一番最初に見つけたのがヒヨドリの巣。どこから探してくるのかスズランテープを巧みに使っている。主な巣材としてはシダの葉や笹の葉などが多く、お椀型に編んであるが、巣立った後風雨にさらされると型崩れが早い。そこでスズランテープは、有効な補強材になっていると言えるが、はたしてヒヨドリはそういう意図をもって使っているのだろうか。私見だが、部屋のオブジェとしては美しさがないので、その後、度々見つけても心ときめかなくなった。
ヒヨドリが巣作りによく利用してくれるのが、裏庭のイロハモミジの木。葉が茂っている時は、意外に分からないもので、裸木になると巣が現れる。毎回、発するのが「こんなところに作ってあったのか」という驚きの言葉。このイロハモミジの枝はよく茂り、ウッドデッキ上の動線をよく邪魔するので、今年も葉の青いうちから大胆に剪定した。すると、切り落とした枝の中から鳥の巣が見つかった。幸い卵も雛も確認できなかったが、この巣は明らかにヒヨドリのものではない。私の造形美感覚としては、ヒヨドリよりセンスがあり、スズランテープは使わず、代わりと言っていいのだろうか、クモの巣で上手に補強し枝に固定してあった。どんぐり型あるいは壺型と言っていいのかな、しかもずいぶん小さい。『ぼくの鳥の巣コレクション』をたよりに推察すると、どうもメジロのものらしい。
わが家の玄関前には、ハナガガシの木が育っている。この木は、ブナ科の中でも自生地が四国や九州など限定的な希少種で、拾ってきたどんぐりをもとに実生から育て、今では3mぐらいになっている。少し前から、玄関の扉を開ける度に、メジロが慌ただしく飛び立っていくことに気づき、その離陸場所がハナガガシであると分かった。そこがお気に入りの場所ならば、餌付けでもしようと、季節柄近くにトマトを置いてみたものの、関心が薄いようである。やがて、イロハモミジから切り落としてしまった巣とそっくりのものを、ハナガガシの樹間に見つけた。
こんな人気の多いところで巣作りかと驚いたが、空き巣だろうと思ったものの、念のため腕を伸ばしてデジカメのレンズを巣の中に向けてみた。すると、ピンク色の鳥肌むき出しの雛が3羽写っていた。さらに木の周りを注意深く観察すると、雛が割って出たと思われる卵の殻が1つと、孵化する前に落ちてしまったと思われる卵が1つ、巣の下に落ちていた。親鳥が戻ってくるのを確認できれば、メジロの巣と判明するが、そう時間はかからなかった。『ぼくの鳥の巣コレクション』によると、使っているクモの巣はクモの卵嚢を包んでいる繭みたいな部分で、「枝の二又部分にクモの糸をなすりつけていき、ハンモック状にし、コケや細い茎をくっつけていく」という記述がある。確かに、見つけたメジロの巣では、2つとも枝の二又部分を利用していた。
裏庭のイロハモミジは、巣作りに最適な場所なのか、ヒヨドリ、メジロについて3つめの巣も見つけた。キジバトの鳴き声がずいぶん近いところで聞こえ、やはり物音や人の気配に驚いてつがいで飛び立っていく場面に何度か出くわした。ハナガガシのメジロの巣の経験から、ひょっとしてキジバトの営巣が見られるのではないかと探してみると、どんぴしゃり。小枝を幾十にも積み重ねただけの荒っぽい仕上げで、お皿型をしていた。こちらは、子育てはすでに終わっていた模様。『ぼくの鳥の巣コレクション』では、鳥の巣の保存法も書かれてあるのでトライしてみよう。
すべての野鳥がそうではないだろうが、人間の生活が営まれる近くというのは、子育てには安全な場所なのかもしれない。ツバメがその好例だが、スズメも民家の軒先というのがかつての定番である。飼い猫に襲われる危険はあるが、人間は、ヘビやカラスなど天敵を追い払ってくれるだろうし、ヘビやカラスも人間に近づきたがらない。野鳥と人間のほどよい距離感を楽しんでいきたい。 |