私が小学生ぐらいの時に、父はメジロを飼っていた。餌は市販の練り餌で、糞の後始末も含めて、私の役割であった。雑木林へメジロ捕りに連れってもらったこともある。まず、囮としてメジロの入った鳥籠を適当な木に吊るす。囮のさえずりに誘われてメジロが集まってくるのだが、鳥籠の近くでメジロの留まりそうなところに、粘着性のある“とりもち”を仕掛ける。とりもちは、ササや長めの枝にガムのような粘着物を巻いたものだ。さらに、半分に切ったミカンを近くの枝に刺しておくこともある。メジロは果樹が大好物なのである。やってきたメジロの足が、うまく“とりもち”を掴めば、その棒は鳥の自重によってくるっと回転し、鳥は宙づり状態となって逃れることはできない。
現在、鳥獣保護法によって野鳥の捕獲は禁じられているが、少し前までの庶民の楽しみの1つであった。過剰な捕獲によって営利目的に発展している場合は除くとして、私の父の楽しみ方を思い出す限り、昔からの日本人と野鳥の関わりをあわす文化の1つととらえている。そうした風土も考慮されてか、例えば奈良県では、市町村に対して捕獲許可・飼養登録を申請することによって、1世帯1羽のメジロあるいはホオジロの捕獲及び飼養が認められていた。しかし、2012年4月から、メジロの捕獲・飼育を原則許可しないことが発表された。
メジロを可愛がっていた頃の父の年齢を少し越えた私は、カメラで野鳥を“捕獲”することに精を出している。おびき寄せるための囮は使わないが、庭に作ったバードフィーダーがその代わりとなる。バードフィーダーとは餌台のことで、半分に切ったミカンなどをのせる。こうした仕掛けに目ざとく訪れるのがヒヨドリ。この攻撃を分散させるためにあちこちにミカンをおくことで、やがてメジロの姿が見られるようになる。仲睦まじく2羽でやって来ることもあるが、雄雌のカップルだろうか。ヤブツバキやサザンカは鳥媒花で、鳥が花粉の運び役となっている。蜜の大好きなメジロは進んでその役割をかってでているのである。
名前の通り目の周囲が白く、体の上面はきれいな若草色をしている。
全国の丘陵から山地の林にすむが、暖地の常緑広葉樹林に最も多い。 |