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野鳥一期一会

 
         
         

キジも鳴かずば撃たれまい 

キジ目キジ科

@♂ A金剛山麓(2004.5.30.)

@♀ A金剛山麓(2007.3.31.)

 「キジも鳴かずば撃たれまい」という諺がある。繁殖期になると少し小高い場所で、「クェッ〜、クェッ〜」と耳障りな鳴き声を発するため、おのずとその姿を探してしまう。わが家の裏山に棲むキジは、目覚まし時計のように早朝時を告げる。オスは顔が赤く、胸は光沢のある緑色で、その姿の鮮やかさにもかかわらず、意外に田畑周辺の草地に溶け込んでしまう。雌は全体的に黄褐色で、さらに見つけにくい。だが、そのキジも肉が美味ゆえ狩猟対象となる。私も小さい頃口にしたことがあり、ブロイラーの比ではない美味しさを今でもはっきりと舌が覚えている。かつては、その味覚に与ろうとした猟師も多く、あの奇声が仇となってしまうわけだ。
 一方、 「雉撃ち」という言葉がある。山登りの際の排泄行為を指す隠語だが、猟師がキジを撃つ際の薮にしゃがんだ姿勢と似ていることから、その名がついたという説がある。

 日本人にとっての親しみやすさで言うと、桃太郎が鬼ヶ島に鬼の退治に行く際に家来につけたのがイヌ、サル、そしてキジであった。さらに、1984年から発行された最初の福沢諭吉一万円札の裏面には、雌雄のキジがつがいで描かれている。それどころか、キジは、1947年、日本鳥学会によって「国鳥」に選定された。その理由として、日本の固有種であることやその姿の美しさ、また、キジの雌は山火事が迫っても卵を守るため巣から離れないと言われるほど母性本能が強いという理由があげられている。
 あらためて、雄の姿は美しい。国鳥にふさわしい日の丸のような真っ赤な丸い顔。首には濃紺、胸には緑色のそれぞれ光沢ある羽が鮮やかである。また、雨覆は褐色だが、それぞれ黄色や黒の羽縁があり、尾は灰褐色の上に黒い横紋があり長く伸びている。私の稚拙な文章では、彼らの装いを十分紹介しきれないが、日本の野鳥においてはとりわけ多くの色をまとい、そのファッション・センスは際立つ。田舎の田んぼの真ん中で、なぜそんなに着飾る必要があるのだろうかとたずねてみたいが、意外に保護色なのだろう。
  それにひきかえ雌はたいへん地味だ。同じキジ科のウズラを大きくしたような容姿で、繁殖期に行動を共にしていても気づかないこともある。雄雌ともにニワトリ大で、動作も俊敏でなく大空を舞うことはできない。なら、卵を温めるのには、こちらの方が目立たなくてよいのかもしれない。

 雄は赤や緑を基調とした色彩で容易に識別できるが、雌はヤマドリにも似ている。
 草原、農耕地、川原、林縁等にすむ留鳥。