十津川村の二津野ダムは、全国有数のオシドリ越冬地としてに注目を集めている。中部以北で繁殖したオシドリは、積雪で植物性の餌が乏しくなるこの時期、餌場を求めて西日本の各地に飛来してくるらしい。日本野鳥の会の観測では、2007年、二津野ダムで越冬したオシドリは約3,300羽と、その年の日本一を記録したようだ。
2011年の冬、ボートで二津野ダム湖を観察する機会を得たが、オシドリはとりわけ警戒心が強い。 「色鮮やかなオシドリの写真を持ち帰ることができれば」と意気込んだが、数百メートル先からこちらの姿に気づき飛び立ってしまう。広大なダム湖を追いかけても追いかけても、同じくり返し。スコープでは色鮮やかなシルエットをとらえることができ驚嘆の声を発するのだが、いざ撮影となると、飛び立つ姿ばかりとなった。
このダムの湖岸にはアラカシやコジイの林が広がっており、6月にはそれらの花が咲いて山肌一面が黄金色になる。オシドリを追いかけていると、湖岸の斜面から駈け下りてくる姿を何度も目撃した。接岸できるところから上陸して落ち葉をかき分けてみると、この時期でも、コジイやアラカシのどんぐりをたくさん見つけることができた。二津野ダムが全国有数のオシドリ越冬地になりえているのは、越冬期の主要な食物となるどんぐりが豊富なことも、その一因と推測する。ちなみに県内では、奈良盆地に点在する古墳の堀池もオシドリの飛来地となっており、例えば崇神天皇陵(天理市)などでも確認できた。
雄は複雑な色彩斑紋をしていて後頭の羽毛は冠羽状になっている。雌は灰褐色。よくご存知の野鳥だが、警戒心が強く、今回は飛翔姿しかカメラにおさめることができなかった。
北海道、本州、九州で繁殖し、留鳥または漂鳥。中部以北で繁殖したオシドリは、積雪で植物性の餌が乏しくなる冬の時期、餌場を求めて西日本の各地に飛来する。 |